第3章 春高予選
シッシッと手で追い払うジェスチャーをして、妹たちを部屋から追い出す
妹たちは不服そうな顔をして出て行った
『妹?確か三姉妹の長女って言ってたね』
「うん、もううるさいうるさい!」
『だろうね、歩が3人ってことでしょ?』
「ちなみに父ちゃん母ちゃんは私よりスゴイからな」
『関西人コワイ』
「で、用件は何?」
『…前に貸してくれた本、あれって続きあるの?』
「あるよ!明日持っていこか?」
『何冊あんの?』
「んー14冊?」
『重いでしょ、明日の部活帰りに取りに寄るよ』
「家までわざわざ?」
『うん』
「じゃあ用意しとくわ」
『また明日』
わざわざ?
それだけの電話?
それにしてもタイミング…
妹たちが扉を開けて聞き耳を立ててる
「はよ寝んか!私もお風呂行ってくる!」
ー次の日
私は空になったドリンクのボトルを集めようと手を伸ばす
「ウォリャーー!」
田中さんの叫び声と共にボトルが飛び散る
「わー!びっくりした!」
「すまん!橘大丈夫か?!」
「大丈夫です!てか田中さん今のキレキレインナーやばいですね!」
「今日も絶好調だぜー!」
本当毎日毎日どんどんみんな成長していって
新しい技を身につけていく
ゲームの主人公の必殺技がどんどん増えていくみたい
10月初めの東京遠征が最後の梟谷グループとの合同練習になる
気を引き締めて頑張ろう
「おつかれしたー!」
「したー!」
「よしっ!歩帰ろうぜ〜」
「うん!今日も暑いから坂下商店でアイス買って帰ろうよ」
「ナイスー」
翔陽と一緒に体育館を出る
「翔陽、今日ツッキーうちに本取りに来るから3人で一緒に帰ろ」
「本?何の?教科書?」
「違う違う、普通の小説」
「歩小説なんて読むのか!俺は無理!1Pで眠くなる」
「だろうね」
後ろからツッキーが言う
「くっそー!俺だって月刊バリボーは読むもんね」
「そうそう、自分が興味あるやつだけ読んだらええねんって」
自転車置き場につくと、ツッキーは躊躇いもせず私の自転車に跨る
いつもの飄々とした口調で
「はいどーぞ」
って言われるから、荷台に乗る
翔陽はこの状況どう思ってるんやろ
3人で坂道を下る