第14章 NEXT LEVEL
ー歩side
ピーッと笛が鳴って、試合が始まる
私は烏養コーチの隣に腰を掛けながらコートを見つめていた
ベンチに入れるマネージャーは1人、と決まっていて私とやっちゃんはある約束をした
今年のIHは私、春高はやっちゃん
来年のIHはやっちゃん、春高は私がベンチに入るということ
1人でベンチにいるのは案外心細い
厳密に言えば烏養コーチもいるし、武田先生もいる
チームメイトも近くにいるけれど、やっぱり試合中はやっちゃんとあーだこーだ言いながら一緒にいたいのに
「なぁ橘」
隣のコーチに名前を呼ばれる
「何ですかコーチ?」
「お前ダテコーに親の仇でもいんのか?」
「え、いませんけど」
「すげー形相だったぞ、殺し屋みたいな顔でコート見てたからな」
「え?!ほんまですか?!嫌やわー」
親の仇、はいないけれど
不可解なセンパイ…はいる
昨日の二口さん、どう考えても悪ふざけがすぎる
一体どーいうつもりでみんなの前であんなこと言ったのか
私なんかのこと何とも思ってないくせに、デートだの俺のこと好きなるだのなんだの…何の話やねん
いつやったか、やっちゃんに二口さんは歩ちゃんのことが好きなんじゃないの
的なこと言われたけど、全く心当たりがない
烏野が負けるなんてこと、全く想像してないけど、もし…そうなったら、私はほんまに二口さんとデートするん?
それダレトクなん?
蛍もほんまにそれでいいの…?
影山くんのサーブから試合が始まる
相変わらずの殺人サーブ
一本目からどえらい威力
まぁ…あの殺人サーブがある限り、ウチが負けることなんて万に一つもないんやから、いらん心配せずに、どっしり構えていればいい
そう思っていたのに…
結果、フルセットまでもつれ込む混戦となった
この試合を、どちらかの高校の関係者ではない立場で純粋に楽しめたら、めちゃくちゃ見応えあるナイスゲームやと思う
でも私は烏野高校のマネージャーなわけで、一進一退の展開にはヒヤヒヤするし、握りしめる手は手汗でビッチョビチョになっていた