第14章 NEXT LEVEL
「…どうして?」
「だって…恥ずかしいやん」
「別に…したことあるじゃん」
「…それはそう…やけど」
「明日からしばらく2人になれないデショ?なのに…もうオシマイなの?」
彼女の髪を耳にかけながら、耳元でそう囁くと歩の耳がたちまち朱色に染まる
「ちょ…蛍」
「それとも何?僕のこと、嫌になった?」
「なっ!そんなわけないやん!」
歩の必死の形相を見るに、多分それは本心なんだろう
彼女の真意を考えあぐねていると、歩は僕の胸に飛び込んできてギュッと背に腕を回した
「…歩?」
「…蛍…大好き」
消え入りそうな小さな声だった
でもそれだけで充分
「…知ってる」
そう言って腕の中にいる歩の髪を優しく撫でる
歩の様子は少しおかしいけど、彼女の僕に対する気持ちだけは疑いようがない
些事は気にせず、歩の彼氏としてもっとドッシリ構えていたい
ーって思ってたのに
また今度は伊達工のキャプテンが歩にチョッカイを出してくる
そして、ムキになって思わず歩は僕の彼女だと言って2人の間に割って入った
「…は?彼女?アイツがお前の?」
「…そうですけど」
「へぇーつまんねぇの」
そう言って伊達工のキャプテンは歩と僕の顔を交互に見る
「だから今後は…
「じゃあさ、こうしようぜ?」
近寄るなと言おうとしたのを遮られる
「なんですか?」
「明日、俺らが勝ったら歩とデートさせろよ」
「なっ!二口さん!またそんな意味わからんことを!」
僕の後ろから顔を出す歩をスッと片手で制する
「…嫌です」
「あ?びびってんのか?」
「何にですか?」
「明日、負けるって思ってんだろ?俺らには勝てねぇって。あ、それとも何か?歩が俺に盗られるって方をびびってんのか」
「どちらも違います。明日は負けませんし、歩はあなたなんかに渡しません」
「ふーん、だったら決まりな。明日、俺らが勝ったら歩のこと借りるぜ」
そう言って伊達工のキャプテンは妖しく笑う