第14章 NEXT LEVEL
ー歩side
ダダダダッ
玄関のドアが閉まると同時に廊下を駆け抜けて洗面所に向かう
ザーッと強く水を出して、手を洗うついでに顔をバシャバシャと洗いながら口にも水を含んだ
何回か水を口に含んでは吐き出すことを繰り返すうちに、口内からミントの味が消えていった
でも…
あの激しい口づけの感触を消すことはできない
チョコミントのアイスを食べるまでもなく、思い出してしまう
色っぽくて艶かしい大人のキスの味を…
無自覚隙だらけ、ってよく蛍には言われるし、そのせいもあって何度か不意に唇を奪われる経験はあった
でもスガさんにしても赤葦さんにしても、軽く唇が触れる程度で、こんな風に…激しく口付けられたことはない
でも不思議と嫌だとか怖いとかは思わなかった
それどころか及川さんは…強い力で私を抱き寄せておきながら、その手はめちゃくちゃ震えてた
すごく強引にしたくせに、震えてるって…チャラそうに見えて実は真面目な及川さんが、一体どういう気持ちであんなことしたんかって思ったら、なぜか胸が痛くなった
はぁ…もうすぐIHの予選始まるってゆーのに、こんな気持ちのままでは困る
今日のことは一旦忘れよう
そう思うのに、脳裏には子供たちを熱心に指導する及川さんの姿が蘇る
困ったことにバレーボールをしてる及川さんはめちゃくちゃカッコいい
今日及川さんは、私が青城のマネージャーだったらって話をした
本当にそうだったとしたら、あの人のプレーを毎日間近で見ていたら…
もしかしたら、私は及川さんのことを好きになっていたかもしれない
アルゼンチンか…
遠いな
及川さんは言ってたように、私のことなんてすぐに忘れて南米美女とよろしくやるに違いない
ならどうして、目の前からいなくなる私にこんなことを…
考えても考えても及川さんの行動の意図を読み解くことはできなかった
そしてそんな気持ちの中、ついにIHが幕を開けた