第13章 新たな風
ー月島side
思った以上に音駒のマネージャーと仲良くなっているのには驚かされたけど、歩に笑顔が戻って何よりだ
にしても相当ひどいこと言われたのに、こうして何もなかったかのように普通に接することが出来る歩を本当尊敬する
音駒を見送った彼女の頭をポンポンと撫でると歩は
「なぁ蛍、りなちゃんの好きな人って誰かな?音駒にいるみたいなんやけど」
と言いながら腕組みをする
「さぁね、直接聞けば?」
「そうやな、次に夏合宿で会う時に聞いてみる」
「歩は本当凄いね」
「え、何が?」
「高校生にもなって普通嫌な思いしたら、もう関わりたくないって思うでしょ」
「どうせ小学生みたいとか思ってるんやろ」
と歩は恨めしそうに僕を見上げる
そして
「まぁ…でもだからこそ、わざわざ謝りに来ることも勇気いったと思うから」
と言って笑った
ああ、眩しい
歩はたまらなく眩しい
人前じゃなかったら抱きしめたいのに…
だから抱きしめる代わりに
「そーゆーとこ、いいと思うよ」
って平静を装って呟いた
「すき?」
いたずらっ子のような顔をしながら僕のことを覗き込む
ッッ…反則だよ
「好きだよ」
目を合わせずに言うと、歩は満足そうにフフフと笑って
「私もだーいすき」
と内緒話をするように耳元で囁いて、チームメイトの元へ走り去っていった
もう…本当…
あの無自覚天然男たらしは、僕にも容赦ない
どんどん僕ばっかり好きになってく
その日も合宿所で一泊し、次の日は音駒ではない他校と練習試合を重ねて、僕たちはIHに向けて走り出した