第13章 新たな風
「じゃあ、ジャンフロ以外でこのチームで一番サーブ凄いのは誰だと思う?」
蛍が言うと、空と庄子くんは声を揃えて
「「影山さんっす」」
と答えた
「影山のは殺人サーブだからな」
と翔陽がコソコソ話をするように言う
「影山はユースにも招集されてるような選手だから、セッターポジションじゃなくても学ぶことは多いだろうし、どんどん質問しに行けばいいと思う」
蛍が珍しく影山くんをヨイショしている
本心からなのか、はたまたプレーを言語化して人に教えるということが壊滅的に下手な影山くんへの嫌がらせか…
「ありがとうございますっ!さっそく影山さんに今日の試合のこと聞いてきますっ!!」
2人は目をキラキラ輝かせながら影山くんのところに走り去っていった
「ふふ、影山が困惑しながら指導してる様子って凄い面白いんだよね」
蛍は2人の後ろ姿を見ながらニヤニヤする
「あー、性格わるー。でもまぁ影山くんも言葉でコミュニケーション取るのは必要やからな」
この合宿が始まる前に縁下さんが、みんなを集めて言ったことがある
それは、察してほしいでプレーするのはナシってこと
「新しいチームになったんだから、こういう動きしてほしいとか、こういう攻撃試してみたいってことはどんどん口に出してコミュニケーション取っていこう」
そう言われてから、蛍もブロックのタイミングやコースの締め方など、明らかに以前より多く発言するように努力するようになった
縁下さんは今やすっかり主将の風格、頼りになるキャプテンだ
「ではそろそろ、今度は夏合宿かな」
猫又監督が武田先生に声をかけた
音駒は片付けを終えて、今からバスで東京に戻る
「じゃあね、また」
と言う研磨さんに「おう!IHでもやろーぜ」
と翔陽が応える
「あのっ…歩ちゃん、やっちゃん」
「ああ、りなちゃんお疲れ様」
おにぎりデスマッチで仲良くなった私たちは、すっかり下の名前で呼び合う仲になっていた
「2人が貸してくれたノート、本当に持って帰っていいの?」
「うん、また夏の合宿の時に返してくれたらいいから」
と言うと、りなちゃんはペコリとお辞儀をして音駒のみんなのところへ走っていった