第13章 新たな風
ー歩side
午後から他の高校とも試合をして、時間的に今の音駒戦が最後のセットというところでコーチが空を呼んだ
そして何かを言われた空の顔がみるみる青くなる
フラフラと私に近づいてくる空
「どうしたん?」
「ま、ママン!!」
「ママン!?あんたみたいな大きい息子産んだ覚えないわ!って、それは置いといて、マジで顔青やけど大丈夫?」
「今から出ろって言われました」
「出たらええやん」
「んな簡単に?!春高ベスト8の先輩たちと互角に渡り合ってる、ヤベェ人たちとの試合にいきなり俺みたいな1年坊主が…」
「大丈夫、練習試合やん!それに今ぐらいの時期には影山パイセンも月島パイセンも日向パイセンもみんな出てたから大丈夫や!いってこい!」
そう言って私は空のちっちゃい尻をバシッと叩いた
覚悟を決めた彼はスゥーーーハァァァーっと大きく深呼吸すると
「ママン、見ててくださいね!いってきます!」
と言った
「音駒と戦ってどう思ったか、ちゃんと言葉で教えてや。なんか怖かった、なんか強かった、はナシやで!」
空はコクンと頷くとアップをし始めた
それからしばらくして、空はガッチガチに震えながら交代選手の背番号が書いた札を片手にコート脇に立っていた
私はスコアノートの交代選手欄に
IN 時田
と書いた
こうして新しい選手が入ってきて、新しいチームが出来上がる
今いるメンバーの方が強かったとしても、後輩に経験をさせて育てていくのが必要な時もある
今3年のノヤさんは高校超級のスーパーリベロやけど、今年度が終わればノヤさんも卒業
夜久さんが抜けた後の音駒の柴山くんのように、うちも泉ちゃん(八乙女)を育てていかなあかん
今がベストメンバーやとしても、一年生も積極的に使おうという烏養コーチの意志が伝わってきた
試合を終えた空は
「もうフワッからのドーンからのうわー!って感じでしたけど、ママンの言語化しろっていう圧がコート外から伝わってきて、自分なりに整理しました」
と興奮気味に言う
「ママン定着しとる!で、言語化できた?」
「思ったのは…音駒は怪物ストライカーとかいないんすけど、あ、白鳥沢の牛島さんみたいな。なんかすげぇ戦いづらいっすね」
「そのすげぇ戦いづらい理由は何だと思う?」
汗を拭きながら、珍しく蛍が空に話しかける