第3章 春高予選
ー及川side
練習終わりで疲れてるのに
クラスメイトと仙台まで祭りなんて面倒
でもいつもノリが良くってクラスの人気者の俺は
誘われたら断るわけにいかないよね
祭り会場の近くで現地集合
俺が一番最後でみんなを待たせてた
「及川くーん!おそーい!」
「浴衣じゃないじゃん!及川くんの浴衣期待してたのに」
マセたガキどもが派手な浴衣に身を包み、派手な化粧をして群がってくる
「みんな可愛くて誰だか分からなかったよ!」
心にもないセリフを言う
あー可愛い彼女でもいたらな
面倒くさい
香水もくさい
ひと通り屋台やイベントを見て回る
クラスメイトの女の子と2人きりになるように仕組まれていたのか、気づくと2人きりになっていた
「みんなとはぐれちゃったね?気遣わせたかな?」
は?何が気遣わせたかな?だよ
好きでもない女の子と2人きりとか勘弁してよ
そう思っても顔に出せない
俺は人気者の及川さんだから
仕方なく花火が見える場所まで行って、隣にいる女の子のさして面白くもない話を笑顔を張り付けて聞く
話半分で聞きながら、可愛い子いないかな〜なんてチラチラしてたら…
白い肌に古典的な紺色の浴衣を着た女の子が視界に入る
長身だから余計目を惹く
てかあれ?…どっかで見たこと…
あの子じゃん
うちの学校にスパイに来て泣いてた…
「歩ちゃん?」
心の中で言ったつもりが言葉になっていたらしく
「歩って誰?」
と、隣の女の子に詰め寄られる
「いや、何でもない。知り合いかなって思ったけど見間違い」
「及川くん、他の女の子ばっか見てるでしょ」
あー面倒くさい
歩ちゃん髪切ったんだ
ショートも似合うね
どうにかして声かけに行こうかなとか思いながら、目線で追いかけると
男?
しかも色白で浴衣姿のイケメン
はっきり言ってお似合…あれ?
烏野の爽やかクンじゃん
は、なにそれ?
付き合ってんの?
あの時、失恋したって泣いてたの嘘?
辺りは薄暗くなってきた
2人は真面目な顔をして話している
爽やかクンが近づき…公衆の面前でキス?
何この面白すぎる展開
ちょうど毎日ツマラナイと思ってたんだよ
歩ちゃんは爽やかクンの胸を押して身体を離す
恋人ではないんだね