第13章 新たな風
歩side
合宿所の食堂で、やっちゃんと2人で手早くおにぎりを握っていく
「やっちゃん結構手際いいよな、料理よくするん?」
「そうだね、毎日かな?」
「毎日?!やば」
「うちお母さんと2人暮らしでしょ?」
「あのバリキャリの母ちゃんな」
「そうそう、お母さんは昔から仕事で忙しかったし夜も遅かったから、小学校の高学年くらいからはもうずっと私が作ってたかな」
「やっちゃん主婦歴めっちゃ長いやん」
「そんな大したものは作れないけどね…歩ちゃんは?」
「え、私?」
「前テスト期間にみんなで勉強した時とか、お昼お弁当作ってきてくれてたよね?」
「あー、うちも両親共働きで妹たちの弁当もあるからな、毎日大量の弁当作ってるついでよ」
「じゃあ主婦歴一緒じゃん」
「せやな」
2人で顔を見合わせて微笑んだ
「それにしてもさ、このお味噌が入ったおにぎり美味しいね」
とやっちゃんがおにぎりを1つ、つまみ食いしながら言う
「うーん、でもなぁ治の味噌おにぎりもっと美味いねんなぁ…あれ何入ってたんやろ?それとも焼きおにぎりやったからかな?」
「治、って宮治さん?」
「ああ、うん。なんか昔琵琶湖でBBQした時に食べた、治が作った味噌おにぎりが仰天するほど美味しくてさ〜それをみんなに食べてほしいんやけど、なんかちゃうねん」
「そう?これも充分美味しいけどね」
「素材の問題かな?嶋田さん、いいお味噌安くしてくれたから」
「安くしてくれたってよく言うね?!最後の方嶋田さん、歩ちゃんに怯えてたからね」
「私はただ、美味しいものを忠に食べさせたくないんですか?って言っただけやん」
今回の合宿の買い出しは(買い出しというか配達させたけど)全て嶋田マートで行った
嶋田さん相手に私が値切り合戦を制した…などと他愛もない話をしていると、ガラガラと食堂のドアが開いた
え…
私は目を疑った
そこに立っていたのは、音駒のマネージャーだった
昨日の会話が思い出されて、ピリッと空気が張り詰める