第13章 新たな風
反論の余地も与えず
「誰か当ててあげようか?孤爪さんデショ」
と言うと、明らかに彼女は狼狽えている
「なっ、どうして…」
「昨日僕と孤爪さんの話、盗み聞きしてたよね?で、君の読み通り孤爪さんは歩のことを好きなのは間違いないと思うよ」
「やっぱり…そうなんだ」
「だから僕からすれば、君の恋は上手くいけばいいって思ってるのに、やり方が気に食わないんだよね…歩を傷つけるやつは絶対に許さない」
刺すような視線を向けると、彼女は顔を強ばらせた
「ご…ごめんなさい、いつまでも音駒のみんなや孤爪さんにとってのマネージャーは橘さんなんだって思い知らされて…辛くてつい…」
「謝るなら本人に謝れば?それに孤爪さんを本気で落としたいなら、歩を攻撃するより、仲良くした方がいいと思うんだけど」
「なか…よく?」
「そ、孤爪さんが好きになったのは歩のどういうところなのか、仲良くなったら分かるんじゃない?」
「…確かに。それに彼女が優れたマネージャーだってことは私の目から見ても分かるの…だから余計に気に食わなかったんだけど」
「優れている以上に努力してるよ、歩は。まぁ、ちゃんと見てあげれば?歩のことも音駒のチームのことも」
「…あなたと話せてよかった。あなたたちはいいカップルね、羨ましい」
「それはどうも」
彼女は…加藤さんと言っただろうか、ペコリと一礼すると仲間の元へ戻っていった
「羨ましいねぇ…」
自嘲気味に笑う
さっきは格好つけて、歩が僕を裏切るわけないって言ったけど、内心余裕があるわけではなかった
影山と抱き合ってたと言われて、そうではないと頭では分かっているけれど、心はどこかザワザワと波が立っていた
それに孤爪さんが歩を好きなんだろうってことも
分かっていたつもりだったけど、言葉に出してしまうと生々しくて不安が押し寄せてきた
本当に…孤爪さんが好きになったのは歩のどういうところなんだろう
誰とでもすぐ仲良くなる明るいところ、他校のマネージャーをかって出るような肝が座って献身的なところ、芯があって圧が強いところ、それとも僕の知らない歩がいたりするのだろうか