第13章 新たな風
この人は確か…音駒のマネージャー?
「なに?」
歩にひどいことを言ったとかいう、音駒のマネージャーが一体僕に何の用があるっていうんだろう
「あなた、烏野のマネージャーの彼氏だよね?」
烏野のマネージャーは厳密には2人いるけれど、多分歩のことを言ってるんだろう
「…だったら何?」
そっけなく言い放つ
「やっぱり、そうなんだ…あのね、じゃあ傷つくかもしれないから言うかどうか迷ったんだけど」
「なに?」
「昨日私、見ちゃったんだよね」
意味深に言って彼女は妖しく微笑む
「だから何を?」
「あなたの彼女が、他のチームメイトと抱き合ってるとこ。黒髪で、ちょっと怖そうな子」
チームメイトの黒髪ねぇ…そんでもってちょっと怖そうって、そんな特徴わざわざ言ってくれなくても、それが影山だってことは分かってる
分かっててわざと
「へぇ、その黒髪ってポジションどこ?」
と訊く
「え、ポジションって…」
「知らないの?ポジションの名前」
「しっ…知ってるけど、マネージャーなんだから、そんな相手チームの誰がどのポジションなんて知らないし」
「ふーん…歩なら知ってるけどね。相手チームの選手の名前もポジションも」
歩の名前を聞いて、露骨に嫌な顔をする彼女を追い込むように話を続ける
「しかも…抱き合ってた、なんて嘘だよね?」
そう訊ねると、彼女は明らかに動揺を見せながら
「ど、どうしてそう思うの?」
と声を荒げる
「どうして…って君より長い時間彼女と一緒にいるから」
「へぇ、随分信用があるのね」
「まぁ歩が隙だらけの無自覚天然男たらしなのは認めるけど…それでも僕を裏切るようなことはしない」
「男たらしって分かってて?」
「無自覚だからね。君がどうしてそんなに歩につっかかるのか知らないけど…いや、音駒の選手たちと仲のいい歩を目の敵にしてるんだから、その中に好きな人でもいるってことか」
チラリと彼女を見ると、図星だったのか顔を赤くして下を向いている