第13章 新たな風
そして後ろからギュウっと歩を抱きしめた
「蛍…ありがとう」
僕が回した腕に歩の手が添えられる
いつもは強がってるけど、いやまぁ本当に強いんだけど…でもやっぱり歩だって悩むことや、傷つくこともある
僕が守ってあげなきゃ…
いつになくしおらしい歩が腕の中にいる
このままじゃ合宿所で良からぬことをやらかしてしまいそうで、僕はわざとらしく話を逸らした
「そう言えば今回の合宿の献立、歩が用意してくれたんでしょ?」
「あ、うん!ってそれで思い出した!みんなもうすぐお風呂から上がってくるよな?私、ご飯の仕上げしてくるわ!」
歩は僕の腕からスルリと抜け出し、立ち上がった
「蛍、今回の合宿で夜ご飯作るって烏養コーチにお願いしたの、みんなのためってのもあるけど、蛍に食べて欲しくて」
そう言って歩はニコッと微笑むといつもの調子に戻って
「蛍も早くお風呂行っておいで」
と僕を急かす
パタパタと忙しなく立ち去っていく彼女の後ろ姿を見ながら
ほんっとズルいんだから…
って独り言をこぼした
その日の夕飯の献立は高タンパク、低カロリーを意識されたものだった
夕食の前にコーチが
「いつも俺はお前らに、運動した後はちゃんとした飯を食えって言ってる。それを意識して今回橘と谷地さんが、2人で献立から食材の調達、調理までやってくれたんだ」
と説明してくれた
「歩、やっちゃん本当サンキューな!おかわりいっぱいするぜ!」
と西谷さんがガッツポーズをする
「いっぱい食べて大きくなれるといいですね」
と呟くと、西谷さんは
「ッテンメェ!月島!もっぺん言ってみろ!表出ろ表!!」
と言いながら、ヘッドロックしてくる
「ちょ、やめてくださいって」
「歩ー!お前こんな奴のどこがいいんだー!やめとけー!別れろー!」
西谷さんが叫び、食堂は笑いに包まれる
ワイワイガヤガヤと合宿らしい喧騒の中、夜は更けていった