第13章 新たな風
ー月島side
初日の練習が終わり、片付けもひと段落したところで
「じゃあ、我々はこれで」
と猫又監督が烏養コーチに声をかける
音駒は近くに宿をとっていて、明日もう一日合宿に参加して帰る予定だ
「じゃあなツッキー!明日こそ黒尾さんみたいなドシャット喰らわせてやるからな!」
灰羽が僕を指差して喚く
やっぱり強豪校との練習はいい
公式戦じゃないからこそ、何度でもトライアンドエラーできる
日向の言葉を借りるなら"もう一回"のある試合だ
明日はどんなことを試そうか
そんなことを考えていると、ふと歩の姿がないことに気づいて、辺りを見回す
まぁビブスの量もハンパなかったし、アイツのことだから小忙しく働いてるんだろう
ガラガラとドアを開く音がして、振り向くと影山が入ってきた
別に影山なんてどうでもいいんだけど、なんだかコッチに近づいてくる
…なに?僕の方に向かってきてるよね
影山は僕の前で足を止めると
「なんだか知らねぇが、音駒のマネージャーが橘さんにヒデェこと言ってきたらしいぞ」
と耳元で呟いた
音駒のマネージャー?
歩とそんな絡んでた気はしないけど…
ていうか何でそれを影山が知ってんの?
歩本人が影山にそう言ったってこと?
「話、聞いてやれよ…あれで結構気にするタイプなんだからよ」
去り際にそう言われて、なんとも言えない気持ちになる
まるで影山は僕より歩のことを知ってるような口ぶりじゃないか
腹が立つ
どうして僕は歩のことになるとこんなに余裕が無くなるんだろう…
何かあったならまず僕に相談してほしいのに…
僕はみんなが合宿所の風呂に向かったタイミングで、洗濯機の置いてあるランドリールームに向かった
ランドリールームに入るとゴウンゴウンと音を立てて、複数台の洗濯機が動いていた
その音のせいか歩は僕が近づいてきたことに気づいていない