第13章 新たな風
そこには不思議そうな顔をした影山君の姿
「大丈夫か?」
「え…あ…うん」
「大丈夫じゃねぇだろ…手、震えてる」
気づかれて思わず両手を背中に隠す
「なんかあったか?…さっき向こう行ったの音駒のマネージャーだろ」
「あ、うん…なんか…すごい嫌われてるみたいで」
へへっとわざとらしく笑う
「知り合い…?」
「いや、今日初めて会ったんやけど…中学時代を思い出して、なんか震えが止まらんくて…ごめん」
中学時代のこと、影山くんは全部知ってるから思わず言ってしまった
「なんかやなこと言われたんだな」
影山くんは震える私の背中を優しく上下にさすってくれる
それだけで苦しかった呼吸が少し落ち着いてきた
「俺には…その…遠慮すんな」
影山くんはボソボソとぶっきらぼうに言うけれど、その精一杯の優しさが嬉しかった
「…うん、なんか…色目使って男と話してる…とかまた、そういう系のこと言われた」
「音駒の連中と仲良くしてんのも気にくわねぇんじゃねーか?」
「…そうかも…確かに私も音駒のみんなと久々に会えたのが嬉しくて、つい彼女に遠慮せず、仲良くしすぎたかもしれん」
「そりゃ別にいいと思うけど…なんか…女って大変だな」
「いやほんまそれよ」
音駒のマネージャーである以上、自分の高校の選手たちと馴れ馴れしくする私が気に食わん気持ちは分かる
それにしてもあの態度はひどいと思う
まだ合宿は始まったばっかりやのに、こんな気持ちで過ごすのは嫌や
あーあ
去年の夏、東京で合宿した時は楽しかったな
潔子さんもいたし、かおりさんや雪絵さん、みんなと修学旅行みたいにキャッキャ盛り上がって…
また今年の夏も合宿するんやろか
その時にはあの子も…音駒のマネージャーとして参加するんやろか
そう考えるだけで陰鬱な気分になった