第13章 新たな風
ー研磨side
月島はおれを牽制するために"歩は僕のものだ"なんて言いにきた
わざわざそんなこと言わなくても、今日ここで歩をどうにかしようなんて思ってないし
おれたちは嫌でもいつか大人になる
今誰と誰が付き合ってるなんて、何の意味もないことだって思うから、必死になってる月島が面白くて思わず笑みが溢れた
去っていく月島の背中を眺めていると
「孤爪さんっ」
と呼ばれる声がした
声がする方をチラッと見ると、新しいマネージャーの…えーっと…なんて名前だっけ…佐藤さん、いや加藤さん?だったかな?がタオルを持って近づいてきた
「まだ髪濡れてます、よかったらこれ」
「ありがとう」
タオルを受け取り、ゴシゴシと髪を拭く
「もうすぐ次の試合始まりますよ」
「あ、うん」
並んで体育館に向かう
「さっき…烏野のマネージャーと話してましたよね、あの人ですか?去年ウチのマネージャー代理してたっていうの」
「ああ、歩のこと?そうだよ」
そう答えると、加藤さんは少し不機嫌そうな顔をして
「名前…で呼んでるんですね。仲いいんですか?」
と言った
「そうだね、歩は面白いから」
「面白い…?」
「うん、あ…噂をすれば、だよ?」
おれたちが体育館に入ると、音駒のベンチのところでリエーフやトラに囲まれて歩が楽しそうに話していた
「橘さん、最近連絡全然くれなくてさ」
「橘さんって急にキショいな、最近もなにも私らそんな頻繁に連絡とってへんやろ」
「違うよ!橘じゃなくて、お前の従姉妹の橘さんだよ!」
「え、なんなん?!リエーフ君、姉ちゃんのこと…!」
「仕事出来る大人の女性っていいよなぁ…」
「やっぱリエーフは美人の姉貴がいるから、歳上好きなんだな」
「な、姉ちゃんは関係ないでしょ!」
歩やトラに揶揄われ、リエーフが口を尖らせる
「そういやアリサさんもあの写真めちゃくちゃキレイやったな〜あ、後で他の写真も見せてな」
「おう分かった、橘〜俺のあまりのカッコよさに惚れても知らないぜ?」
「はいはい、じゃあ次の試合も頑張って」
「急に塩対応!」
歩とリエーフのやりとりに、ベンチがどっと沸いた