第13章 新たな風
「歩久しぶりだね」
久しぶり、と研磨さんは言ったけど、私は半年ぶりに会ったとは思えなかった
昨日まで一緒にいたみたいな気さえする
「元気でしたか?髪、プリンが伸びてカラメル多めですね」
研磨さんのプリンヘアは黒髪部分が伸びていた
「目立ちたくなくて、この色にしたけど余計目立つから、早く黒に戻したい」
と言うけど、それなら全部黒染めすればいいのに
そうしないのは面倒だからなのかな
「そう言えば音駒、女子マネ入ったんですよね?良かったですね」
「まぁ…どっちでもいいけど、トラは喜んでる」
「でしょうね」
と話していると、噂のマネージャーが荷物を持って体育館の中に入ってきた
小柄な身体で大きなバックを抱えている姿がやっちゃんと重なって、思わず助けてあげたくなる
「可愛い子ですね」
「そう?わかんない」
「わかんない?」
「キョーミないからかな」
「なんちゅーこと言うんですか」
「研磨さんっ!アップ始めますよー!」
少し離れたところから声がして目をやると、リエーフくんがこちらに向かってブンブンと手を振っていた
「じゃあまたね」
そう言うと研磨さんは、音駒のメンバーの元に戻って行った
その背中越しにふと、音駒のマネージャーの女の子と目が合い軽く会釈をしたけれど、彼女はフイと顔を逸らした
ん?…今のはわざと…
「歩ちゃんっ、ビブス配ってくれる?」
やっちゃんの声で思考が遮られた
「あ、うん!」
「えっと…うちが黄色で音駒が赤?でよかったかな」
「じゃあやっちゃん、音駒のマネージャーさんに渡してきてくれる?私、烏野のみんなに渡してくるわ」
と言ったのは、なんとなく…さっきの態度から、音駒のマネージャーにビビってるから
やっちゃん、ごめんよ
心の中で思いながら、ビブスを取りに行って烏野のみんなに配った