第13章 新たな風
すごいなぁ…姉ちゃん
やりたい仕事を見つけて、それに真っ直ぐ努力して夢に向かって進んでいく
私もあと数年して大人になれば、そんな風に思える仕事に出会えるだろうか
それにしてもリエーフ君もアリサさんも美しすぎる
まじでモデルになればいいのになぁ
そうこうしている間にあっという間に合宿の朝を迎えた
初日から音駒との練習試合が組まれている
私は音駒のみんなが来るのを今か今かと待ち侘びていた
「コーチ、私はまた音駒のマネージャーですか?」
練習試合の開催校ということもあり、大量のビブスや備品を用意しながら烏養コーチに訊ねる
「いや…武田先生が猫又先生に聞いたところによると、音駒はマネージャーが入ったみたいだな」
「そうなんですか?それは良かったですね」
「お前と同じ2年生だと思うぞ」
「へぇ」
「それにウチも、去年は3人いたマネージャーが1人減ってるし、貸してあげれる余力はねぇな」
「確かに」
「音駒の連中は寂しがるだろうけどな」
「そんなことないでしょう、念願の女子マネが入ったんですから!山本さんあたりめっちゃ喜んでそうですね」
と、噂をしていると音駒のご一行が到着した
「ちわーす」
体育館の扉が開いて、ゾロゾロと選手が入ってくるけど何だか音駒の雰囲気が違う
いつもは
「歩ちゃーん、お久しぶり!今日ももちろん俺ら専属のマネージャーだもんね」
ってゆー黒尾さんや
「おぉ!歩久しぶりだな!またちょっと髪伸びてきたんじゃねぇの?前みたいにショートにしろよ!」
ってゆー夜久さんの声が聞こえて来るのに、今日は誰も話しかけてくれない
遠くでリエーフ君と犬岡君が翔陽と盛り上がってるのを横目に、ああ…あの人たちは変わらないなって思った
選手の群れの中から、特に急ぐでもなくテンション上がるワケでもなく、ポケットに手を突っ込んだままの研磨さんがトボトボとこちらに向かって歩いて来る
去年のGWも練習試合したって聞いてたけど、研磨さんが宮城にいるのは何だか不思議な感覚だった