第13章 新たな風
「俺たちは見学ってより、入部希望です!」
そう言って3人は私に入部届を差し出す
「そうなの?!大歓迎!えっと…時田…空くん?」
受け取った入部届を預かりながら、名前を確認する
「あ、それ空って書いてスカイって読むんです!」
「…スカイ?え?!」
私は入部届に書かれた名前と本人を交互に見る
「…っすよね、キラキラですよね」
キラキラの自覚あるんや
「最近の若者って感じの名前やな」
「一個しか変わんないじゃん」
後ろから蛍にボソッと呟かれる
「空でスカイが来たら、蛍でケイが霞むな」
「別に難読で張り合ってないし」
ボソボソと抗議する蛍
「残りの2人は…八乙女くんに庄子くんやね、ようこそ烏野高校バレーボール部へ」
3年生が3人抜けたところに、1年生が3人入ってきてくれた
こうして新生烏野高校バレー部は5月から始まるIH予選に向けて、始動したのだった
「去年はGWに合宿したんですよね?」
私は去年の部活日誌をペラペラと捲りながら武田先生に訊ねる
「はい、うちの高校の合宿所は分かりますか?」
「あー、なんか課外活動かなんかで一回使った気がします」
「そこでみんな朝から晩までミッチリ練習して、練習試合もしましたよ。音駒と初めて戦ったのも、その合宿の時です」
「なるほど…もう一月もありませんけど、音駒は今年も来てくれるんですかね?」
「はい、猫又先生にはお願いしていますし、あとうちは全国ベスト8まで来たんで、他の高校からも練習試合の依頼が来てますよ!去年の今頃は練習試合をしてくれる相手を探すのも一苦労でしたからね」
そう言って武田先生は微笑む
春高の最後に大地さんが、武田先生にお礼を言った後に聞いた話
烏養コーチを呼んだのも、音駒を初めとする強豪校たちとの練習試合を頼んでくれたのも、全て武田先生だったようだ
ツテも何もない未経験者の先生にすれば、練習試合1つセッティングするのも大変だったに違いない
大地さんの言葉通り先生がいなければ、今の烏野バレー部はなかった
「先生は劉備ですね」
「三国志の…ですか?」
「はい、先生の人柄に惹かれて強い武将や、切れ者の軍師が続々と集まってきて、烏野という国が強くなった気がします」
「そんないいものじゃありませんよ、ただ…」