第13章 新たな風
「え、付き合ってへんよ」
「そうなんすか?だったら俺らもワンチャンあるってこ…
「ないから」
と後ろから呟くような声が聞こえて振り返ると
不機嫌そうな顔で新入生たちを見下ろす蛍の姿
「蛍…」
「練習始めるから、君たちやるんならさっさと着替えてくれば?
それから歩、ちょっときて」
「あ、うん…ってわけなんで、着替えある人は着替えてきてな」
新入生たちにそう伝えると、蛍の後ろ姿を追いかける
「蛍、待ってー」
と、突然立ち止まって振り向いた蛍にぶつかりそうになる
蛍は呆れたような表情で見下ろしながら、右手で私の口元を掴んでヒヨコのような口にさせる
「ふぁ、はにふ!」
「また出た、無自覚隙だらけ」
「ふぇ?!ひまほまへんへ…
今とか全然隙なかったやん!」
蛍の右手を振り解いて抗議する
「どこが?後輩相手にワタワタして…はっきり僕と付き合ってるって言えばいいのに」
「そんなん聞かれてないのに答えたらイタイ奴やろ!」
「ってなわけだから、橘目当てじゃなく純粋にバレーやりたい人だけ着替えてきてくれ」
私たちの痴話喧嘩を見ていた田中さんが、1年生に促して、次に戻ってきた時には1年生は経験者の3人だけとなっていた
「あれ?結局君たちだけ?」
「はい、みんな橘先輩目当てで見にきただけみたいです」
1人の男の子が答える
「私なんてそんな…目当てにして貰うような代物じゃないから!私ごときでそんなん言うてたら、こないだ卒業したマネージャーの先輩めっちゃ美人やったんやから!」
「そうなんですか?でも先輩もめちゃくちゃびじ…月島先輩怖いんでやめときますね」
「月島先輩…って名前、知ってるん?」
「あ、はい!春高の試合見てましたから!月島先輩めちゃくちゃカッコよかったです!」
「蛍〜、やってさ」
近くにいた蛍に言うと、蛍は一年生の方を一瞥して
「どうも」
とそっけなく答えた