第12章 移ろう季節
ー月島side
こうなるんじゃないかって思ったから、面倒だけど来てよかった
本当…相変わらず無自覚だし隙だらけ
卒業式のあと、偶然国見と出会ってお茶したっていうのは歩本人から聞いていた
隠さずに言ってくれたから多分歩にやましい気持ちはないんだろうけど、問題は国見の方
どう考えても、面倒くさがりでコミュ力が高い方じゃない
多分思考回路的には僕と似ていると思う
偶然出会った他校のマネージャーなんかをわざわざお茶に誘うタイプじゃないだろ
ってことは国見は多分歩のことを…
前に合宿に来た時もそうだったけど、何故か2人は微妙に仲がいいのも気になるし
でも今は僕が歩の彼氏だから、国見も含め他のヤツらには、変な気起こさないように牽制する必要がある
騒然とするメンバーに僕たちが付き合っていることを伝えた
で、もう1人
この無自覚隙だらけのご本人にも分からせてあげなきゃいけない
自分は一体誰のものかって…
だから人気のない水道まで連れ出して、後ろからギュウと抱きしめた
「ちょ、蛍…どうしたん?」
「…歩は僕のものだから」
「なっ…」
首だけで振り向いて何か言おうとする歩を口づけで黙らせる
「ちょ、蛍!こんなとこで…」
慌てる歩
「こんなとこじゃなければいいわけ?帰る?帰って僕の家で続きする?」
と妖しい笑みを浮かべて言うと
「帰らへんわ!来たとこやろ!もう…なんなん」
彼女は真っ赤になった顔をパタパタと仰ぐ
「何って…君があんまり無自覚隙だらけだったから、お仕置きだよ」
水道で冷やされた手の甲に目をやると、もう赤みも引いている
僕は持っていたタオルで歩の手を拭いてやり、冷えた手をギュッと握りしめた
「戻ろうか」
「うん…あのさ蛍」
「なに?」
「私が好きなんは蛍だけやから」
ッッ
まったく…本当こういうこと無自覚で言ってくるからタチ悪い
「知ってる」
そう言って、繋ぐ手に力をこめて体育館に戻る廊下を並んで歩いた