第12章 移ろう季節
ー歩side
そんなつもりじゃなかったのに、国見ちゃんに誘ってんの?とか言われて、動揺のあまり手にチャイを溢すっていう…
しかもみんなに国見ちゃんと付き合ってるって揶揄われて、顔がカァっと赤くなる
「ちがっ!違うって!そんなんじゃないって、なぁ?!国見ちゃんも何か言ってよ!勘違いやって!」
「…さぁ、別に俺はいいけど」
国見ちゃんは平然としてる
と、そこに蛍が近づいてきて
「歩、手冷やした方がいいでショ」
って、国見ちゃんがタオルで押さえてるのと逆の手をグイッと引っ張る
「わわ」
立ち上がると共に、国見ちゃんから手が離れた
蛍は人目も気にせず、私の手首を掴んでスタスタと歩き始める
「ちょ、蛍っ…みんな見てるから」
「…だから何?見られたらマズいわけ?」
そんな私たちの姿を見ていた他のメンバーがざわつく
「えええ、三角関係じゃん?!」
「月島も歩狙いなのか」
口々に言うみんなの方を振り返った蛍が
「歩は僕の彼女なんで、よろしくどーぞ」
って言い放つ
「ぬわーーーにぃぃぃ??!!!?!」
「いつの間に!コラ!待て!」
「てか翔陽くんは知ってたの?あの2人が付き合ってるって」
「あ、おう。春高終わってすぐ付き合ってたぞ」
「日向詳しく!」
矛先が翔陽に向いている隙に体育館から抜け出して、水道があるところに向かう
蛍が無言で蛇口を捻って、私は少し赤くなった左手を水で流した
すると急に蛍が後ろからギュウっと私のことを抱きしめた
「ちょ、蛍…どうしたん?」
「…歩は僕のものだから」
「なっ…」
何で急に他校の敷地内で、こんな恥ずかしいことを…
抗議しようと首だけで振り向いて口を開こうとするけれど、唇で蓋をされてしまった
「ちょ、蛍!こんなとこで…」
慌てる私に蛍は
「こんなとこじゃなければいいわけ?帰る?帰って僕の家で続きする?」
と妖しい笑みを浮かべて言う
「帰らへんわ!来たとこやろ!もう…なんなん」
恥ずかしくて身体がアツい
私は両手でパタパタと顔をあおぐ
「何って…君があんまり無自覚隙だらけだったから、お仕置きだよ」