第12章 移ろう季節
ー歩side
白布さんにもお返し渡せたし、しかも喜んでもらえてよかった
足取り軽く、つとむんに指定された体育館に向かう
白鳥沢は寮も併設された私立の高校ってこともあって体育館もいくつかある
今回集合場所になっているのは、合宿で使わせてもらった体育館だった
「お疲れ様ーっ」
言いながら体育館に足を踏み入れる
「おおお!姐さん久しぶりー!!!」
「来てくれてありがとう!!」
みんなが口々に歓迎してくれる
「おぉ、歩っ…そ、その久しぶりだな」
後ろから声をかけられて振り返ると、金ちゃんが立っていて、何故かしどろもどろやし、目が泳いでる
「い、良い天気だな!元気してたか?!」
「金田一、不自然」
と言いながら国見ちゃんが後ろからヒョコッと顔を出す
「国見ちゃん!来たん?!珍しっ」
「…歩が行くって言うからじゃん」
ボソッと国見ちゃんが呟く
私はあの日のことを思い出して、ドキリとした
あの日、国見ちゃんは私のことをタイプやって言って…それに彼女のフリをして写真を撮る時、私の髪にキ、キ、キス…
気まずい沈黙をかき消すように、私は荷物の中からタッパーを取り出しながら
「そ、そや!塩キャラメル作ってきてん!みんな食べる?!」
と努めて大きな声でみんなに呼びかけた
「塩キャラメル?姐さんが作ったの?!すげー!全員揃うまで、これ食べながら待とうぜ」
集まってきたみんなが私を囲むようにして、一つずつキャラメルを受け取って口に放り込んでいく
「うっま!」
「てかこれって作れるの?!、まじすげー!」
「ちなみにチャイもありまーす!キャラメルと一緒にやから甘さ控えめにしてみましたー!」
と言ってどでかいポットを取り出した(翔陽に持たせてきた)
「姐さんどんだけー?!俺らをどうしようとしてんの?!」
「てかチャイ作るとかオシャレさハンパなくね?」
みんなが紙コップ片手に散らばって行く様子を見ていた国見ちゃんが、私の横に膝を抱えてしゃがむ
「く、国見ちゃんもどーぞ」
と言って紙コップを渡す
「ありがと」
そう言って紙コップを受け取った彼は、私に顔を近づけて耳元で囁く
「なんなの、俺のこと誘ってんの?」