第12章 移ろう季節
歩がこんな風に腹割って、悩んでること教えてくれて正直嬉しかった
喉元まで「ほな一緒に店やったらええやん」って言葉が出かかったけど、飲み込んだ
歩は誰にも流されず、自分の意思で自分の将来を決めるべきやと思ったから
それでもほんまに思い悩んで、どうしようもなくなったら、そん時手を差し伸べてやればいい
「まぁまだ将来のことなんて考えすぎんな、うまいもんでも食って早よ寝ろ」
「うん、さっき作った塩キャラメルでも食べて寝るわ」
「なんなんそれ?!めっちゃうまそうやん!今度作ってくれ」
「わかった、ほな私が今度そっち帰った時は…
味噌おにぎり作ってもらうわ、ほなおやすみ」
「おう」
歩は覚えとった
あの日俺が初めてアイツのために作った料理
握り飯が料理と言えるんかは分からんけど、ガキの時に食べたそれを今でも覚えてくれてるとは…
俺はドタドタと階段を降りて、風呂場の扉を開ける
「どやツム!!飯作んのヤバいぐらい幸せやぞ!」
裸の侑に向かって言い放つ
「は?!今?!わけわからん!さっむ!閉めろやサム!!」
「さっむとサムかけてんの、オモロないで」
「急に風呂場に乱入しといて理不尽!!」
「あんたら!高校生にもなって何を風呂場で騒いでるんや!!」
リビングからオカンの怒鳴り声がする
よし、やったろやないか
歩にウマイ味噌おにぎり作って
またあの笑顔、絶対見るんや