第12章 移ろう季節
ー歩Side
家に着くとすぐに、スマホを見ながら冷蔵庫から材料を取り出した
「へー、意外と簡単なんやな」
料理を作ってる間は無心になれる
何も考えずに没頭できる
私は国見ちゃんが好物と言った塩キャラメルを作ってみることにした
買うものやと思ってたから作る発想なかったけど、家にある材料で意外と簡単に作れそう
はちみつと加塩バターで作れば罪悪感も少ないし、運動中の糖分補給にもなるかな
工程が少ないから、あっという間にバットに流し込んで、あとは冷やし固めるだけって状態になった
上手に出来たら国見ちゃんに…
国見ちゃんに?いつどうやって渡すの?
会う機会なんてそうそうないのに
彼女のフリしてただけやって自分に言い聞かせるけど、私のことタイプやって言うたり、ツーショ撮るのに髪にキスしたり…
からかわれてるって分かってても意識してしまう
女慣れしてるんやろうか
表情読めんすぎて何考えてるか分からん
応えられない気持ちにはハッキリ言うって決めたばっかりやのに
結局国見ちゃんに肯定してもらえて、このままの自分でいてしまうんやろう
ずるくて優柔不断な自分のまま…
だから私は…今日国見ちゃんと撮った写真も消せずにいた
国見ちゃんがカモフラのために必要やっただけで、別に私がこの写真を残しておく必要なんかないのに
はぁ…と溜息を吐きながらソファに腰掛ける
キャラメルが固まるまで、特にすることはないし私はスマホを取り出した
「ん?なんかめっちゃ通知きてる」
トーク画面を開くと、擬似ユース合宿メンバーのグループラインが賑わってる
何でも、終業式の日に白鳥沢の体育館を使わせて貰えるみたいで、久々にみんなで会ってバレーをしないかって話みたいだ
つとむんや黄金、みんなと会いたいけど、選手でもない私が行ってもいいもんなんかな
それにもし白鳥沢に行くなら、お礼を言いたい人がいる
いつも愛用してる、このパーカーをくれた白布さん
白布さんは、体調不良の私を看病してくれて、私は何もお返し出来てない
白布さんは次に会った時でいいって言ってたし…