第12章 移ろう季節
「そう?最近だったらキスしてる写真SNSにあげたりするカップルとかザラにいるじゃん。なんだったらキスして撮る?」
「ちょ!まじで私をからかって遊んでるやろ!」
膨れながら言い返してくる様子は、もういつもの歩だった
「元気になったみたいだね」
「おかげ様で、ってこれはほんまに感謝してる。今日国見ちゃんに会えて良かった」
やめて
「俺の方こそ、助かったよさっき」
「どういたしまして、あっくん」
やめて
もうこれ以上
好きにさせないで…
「じゃあね…気をつけて」
「うん、またね」
小さく手を振り、駅に向かう彼女
その後ろ姿に何か言いたかったけど、何も言えなくて…
ただ小さくなっていく彼女の背中を見ていた
今日会えたのだって偶然で、次いつ会えるか分かんない
それに歩は今、月島と付き合ってるって…
月島が彼女を好きだってゆーのは分かってたけど、いつの間にやらそんなことになってた
あーあ
やっぱ同じ高校で同じ部活ってアドバンテージあるよな
ただ…もちろん複雑な気持ちはあるけど、案外大丈夫かもしれない
同じ高校で同じ部活
そのアドバンテージはあと2年で消え失せる
長い人生のたかだか3年一緒にいたから何だっていうの?
動くのは今じゃない
燃費良く、効率良く、彼女を俺のものにするのはまだ先
携帯がLINEの通知を告げる
電車に乗ったのであろう歩から送られてきた画像を開くと、そこには恋人同士にしか見えない俺たちの姿があった
ー翌日
「国見ぃ、お前クラスの奴らに聞いたぞ?!」
金田一が高めのテンションで絡んでくる
「なにを」
「昨日彼女といたって!何だよお前、てっきり送別会が面倒だから帰ったのかと思ったら…まさかデートとは!それならそう言えよ!相手誰だよ、あの子か?前に告られてた、同じクラスのほら、ツインテールの」
「ちがう」
「だったら誰…
「歩」
「…え?!?!?!」
金田一のリアクションはいちいちおもしろい