第12章 移ろう季節
ー国見side
別にからかってなんていないし、本心だけど
君はどこまで本気にするかな
…反応を見る限り、俺のことも全く気のない相手って訳じゃなさそうだけど
「ちょ…国見ちゃ
からかわれたと思った彼女が、俺の名前を呼ぶ
「ダメじゃん、彼女なんだから名前で呼ばなきゃ」
そう俺が言うと、彼女はハッと口を押さえキョロキョロと辺りを見回して
「あ…あっくん…とか?」
と少し照れながら呟いた
は?なにそれ?あっくん?
可愛すぎか
もうからかってる余裕もないじゃん
一生そう呼べばいいのに
一生隣で
店を出た俺たちは、歩の電車が来るまでの間、駅の近くのベンチで少し話をした
「で、何さっきの…あっくんって」
「え、だって急に名前で呼んでとか言うから」
「俺の名前知ってたんだ」
「知ってるよ、アキラやろ?だからって急に呼び捨てすんのも、申し訳ないし…咄嗟にあっくんって言ったけど、あかんかった?」
「いや別に」
「良い名前やな、アキラって」
「え?」
「しかも漢字が国見ちゃんにピッタリ、特に優れて秀でてるって意味やろ」
歩は指で空中に『英』と書きながら微笑む
あーなんなのマジで
どうすればいい
でも今は違う
強引に行ったところで彼女は月島を選ぶ
今はまだ…
でもこのまま返したくない
「歩」
「ん?」
「写真とってくれない?」
「え、国見ちゃんの?」
「ううん、2人の…さっきのクラスメイトに、彼女の写真見せろとか言われて1枚もなかったら…その、不自然かなって」
「あ、なるほど!いいよ!私のでとる?あとで送ってあげる」
そう言って彼女は自分のiPhoneを取り出して、慣れた手つきでインカメを起動させる
「はい、とるよっ」
カシャッ
シャッターが切られる瞬間、俺は彼女を抱き寄せ、髪の毛にキスをした
理性が吹っ飛ぶほど良い匂いがして、慌てて彼女の髪から離れた
「ちょっ…国見ちゃんっっ!何すっ…」
突然のことに歩は真っ赤になって硬直してる
「カップルなんだから、そんくらいするでしょ」
「いやまぁ…そうかもしれんけど急にびっくりするやん」