第12章 移ろう季節
「でも…それが別に悪いとは思わないけど」
そう言って国見ちゃんは妖しく笑う
「え?」
「誰だってそうじゃないの。本当に気のない相手ならともかく、ちょっとでもいいなって思う相手から好きだって言われて嬉しくない奴なんていないじゃん」
「いや…まぁ、そやけど」
「だけどみんな、本命とか恋人とかがいるって言う枷があるから、自分に言い聞かせてるんだよ。喜んじゃいけない、好きになっちゃいけない…ってね」
「国見ちゃん…」
「で、その枷が効かない一部の人間が浮気なり、二股なりするってだけで、歩の気持ちはそんな思い悩むほど、おかしなことじゃないって思うけど」
非難されると思ってたこんな気持ちを、国見ちゃんは掬い上げて受け止めてくれた
国見ちゃんに言ってよかった
少し肩の荷が…
「それに…
歩を欲しいって思う人間からすれば、君のそーゆーとこ…自分に好意を持つ人間を無碍に出来ない性格ってのは、願ったり叶ったりだからね」
…?
今のはどういう意味?
「国見ちゃん今の…
「うわー!国見じゃん!」
私の声は、聞きなれない男子の声に掻き消された
国見ちゃんは私の斜め上らへんに視線をやると、小さくため息を吐く
国見ちゃんが視線を向ける方、つまり声がした私の後ろを振り返ると、そこには国見ちゃんと同じ制服を着た男女が数人立っていた
「うわ…」
国見ちゃんが小さく呟く
男女のグループと国見ちゃんを交互に見ていると、国見ちゃんに声をかけた男子が近づいてきて
「え、なに?…すっげぇ美人なんだけど…もしかして国見の彼女?」
と私に声を掛けてきた
「あ、えっと…わた…
「そーだけど」
私の声に被せるように国見ちゃんが答える
?!
私は驚いて国見ちゃんの顔を見た
国見ちゃんは顔色ひとつ変えずに
「だからデートの邪魔なんだけど」
と言い放つ
え?!え?!
ちょっと、何言ってんのこの人
パニックになる私の後ろから
「えー、ひど。彼女いるならいるって言えばいいのに」
と1人の女の子が言う
まじで状況が掴めない