第12章 移ろう季節
歩side
感情の読めないその瞳に見つめられて、気付いた
そうか、私はこの気持ち誰かに聞いて欲しかったんかもしれん
それも烏野メンバーじゃない誰かに…
スガさんや縁下さんへの複雑な気持ちを、やっちゃんに言えるわけがないし、その点で言えば一度醜態を晒してる、国見ちゃんはうってつけかもしれん
「あの…何て説明すればいいのか分からんけど、私今蛍と付き合ってて」
「けい?」
「あ、ツッキーと…」
チラリと国見ちゃんの顔を見ると、一瞬すごく動揺したような気がしたけど、すぐにいつもの表情に戻って
「あ、そう…で、何?月島と喧嘩でもしたの?」
とポケットに両手を突っ込みながら言う
「いや…そうじゃないんやけど…今日うちも卒業式で、その後に…前に告白された3年生の先輩にお断りの返事をしてん」
「へぇ」
「私が今好きなんは蛍だけやし、中途半端にしてんのはどっちも傷つけるって思ったから、これからはちゃんと応えられない気持ちには応えられないってハッキリ言おうって決めたんやけど」
「けど?」
「別に嫌いな人じゃないねん、先輩たちはみんな素敵な人やし…
「まってまって、たち?」
「あ、うん…今日は2人お断りしたんやけど、1人は2年の先輩で」
「…まじか」
「で、先輩たちはみんな素敵で断る理由なんて本当はなくて…私、好きって言ってもらえて正直嬉しかったし、だからその気持ちを無碍にするんがすっごい辛かった」
「よーするに歩は、気持ちには応えられないけど先輩たちには自分のこと好きでいてほしいんじゃないの?」
「っそんな…」
「本当のことでしょ?自分は月島と付き合いながら、自分に好意を寄せる人には強く断れない、それってその人たちの気持ち、満更でもないって思ってるからでしょ」
図星だった
熱を持たず、淡々と紡がれる国見ちゃんの言葉は、私の心を見透かしているように、気持ちを言い当てていく