第12章 移ろう季節
ー国見side
見間違いだろうと思った
3ヶ月も彼女に会ってないと、ついに幻覚を見だしたのかと
でもあのグレーのパーカー、合宿ん時に見たような…
ガラス張りの店内に見える少し背の高い女子高生の姿が、歩のような気がした
その子はスパイスの棚の前でスマホを片手に、色んな瓶を手に持っては神妙な顔をしている
その横顔が紛れもなく歩で、これは見間違いなんかじゃないと気づいた
俺には何に使うのか検討もつかない商品をいっぱいに詰めたエコバッグを肩からかけて、彼女が店から出てきた
そのタイミングを見計らって、後ろから声をかけると彼女は弾かれたように振り向く
「く、国見ちゃん?!」
振り向いた彼女は見慣れない制服姿だった
大体いつもジャージ姿だから、スカートの裾から覗く生脚が眩しすぎて、俺は目を背けた
それにその上に羽織っているグレーのパーカーが少しオーバーサイズで、手の甲が隠れる感じがたまらなすぎた
髪も少し伸びたのだろう、なんだか以前にも増して女の子らしさが倍増していた
この何とも言えない気持ちを隠すように平静を装って、彼女の荷物を持ち、他愛もない話を続けた
「てか、久しぶりだね」
「ほんまに!元気にしてた?」
「うん、歩は?」
「…あ、うん!元気!」
彼女はそう答えたけど、明らかに変な間があったし、何より表情がいつもの歩と違っていた
こんなこと言ったら怒られるだろうけど覇気がないというか、気迫が足りないというか…
「…なんかあったの?」
と訊く
「いや、別に大したことでは…」
大したことではない、ということは何かはあったってことだよな
俺は最近出来たカフェに彼女を誘った
カフェに向かうまでの間、歩は努めて明るく話しかけてきた
「今日は金ちゃんは一緒ちゃうの?」
「うん、今日卒業式だったんだけどさ、部のメンバーで送別会も兼ねて昼ごはん食べに行くとか言い出したから、面倒だし帰ってきた」
「自由!及川さん泣かはるで!」
「だって部活じゃないのに、時間拘束されるとか無理…てか及川さんと言えば、聞いた?」
「え、なにが?」
「及川さん本人から聞いてないの?」
「だから何を?」