第12章 移ろう季節
「く、国見ちゃん?!」
そこには白いブレザーにブラウンのマフラーをした国見ちゃんが立っていた
そう言えば青城の制服ってこんなだっけか、一度及川さんのを見た気がするけど、国見ちゃんの制服姿は初めて見るから新鮮だった
「何してんの?」
「え、あ、買い物…」
「あっそ、1人?」
「うん、国見ちゃんは?」
「俺も1人…てか、それ重そうだね?貸して」
そう言って国見ちゃんは私の肩からエコバッグをひょいと持ち上げる
「あ、ごめんな」
「重。ったく…こんなに何買ったの?」
「え、ナッツとかスパイスとか、ついつい…」
「好きなの?料理」
「あ、うん!なんか見たことない香辛料とかズラーっと並んでるの見ると、これで何が作れるんやろ?ってテンションあがる」
「そう、さっきすごい顔してスパイス選んでたもんね」
「えー見てたん?!めっちゃ恥ずかしいやん!」
「うわー、あの女子高生スパイスめっちゃ睨みつけてるーって思ったら歩だった」
「もうっ言うてよ!分かってたくせに何してんの?って聞いてきたん?!恥ずかしい〜っ」
私、どんな顔してスパイス選んでたんやろ…
「てか、久しぶりだね」
国見ちゃんが言う
国見ちゃんと会うのは擬似ユース合宿以来やから3ヶ月ぶりぐらいかな?
「ほんまに!元気にしてた?」
「うん、歩は?」
「…あ、うん!元気!」
実際のところ、現実逃避するみたいにここへ来た私の微妙なニュアンスに気づいた国見ちゃんは、怪訝な顔をしながら
「…なんかあったの?」
と訊く
「いや、別に大したことでは…」
「歩、最近出来たカフェでも行く?チャイが美味しいって評判なんだけど…スパイス好きなら、気になるんじゃない?」
まさにさっき、スパイスの棚を見ながらチャイを作ってみようとか思ってた私に国見ちゃんがドンピシャの提案をしてくる
「え!行きたい!」