第12章 移ろう季節
彼女はこのハンドクリームをいい香りだと気に入り、なくなれば次も買うと言っていたけど
この大きさがあればしばらくは保つだろう
何も親切心からじゃない、俺の最後の抵抗
香りというのは不思議なもので、匂いが妙に昔の記憶と繋がることがある
特定のにおいが、それに結びつく記憶や感情を呼び起こす現象は、プルースト効果と言うらしい
フランスの作家マルセル・プルーストの小説の中で、主人公がマドレーヌを紅茶に浸した際、その香りで幼少時代を思い出す場面があり、その描写が元になったようだ
だから君もこの匂いを嗅ぐ度に思い出せばいい
俺が君のためにこの香りを選んだことを
そして…俺が君を好きだったことを