第12章 移ろう季節
『あ、影山くん?勉強してた?遅くにごめん』
「おお、どうした」
『私、影山くんに貸したノートの間に定規挟んでなかった?今線引こうと思ったらなくって』
「…ちょっと待って…ぁあ…これか?銀色のアルミっぽいやつ」
『あーそれそれ!!あるならよかったわ!』
あ、このままではこれで会話が終わってしまう
必死で話題を探す
「なぁ」
『ん?』
「…その、古文に出てくるような時代は…やっぱりみんな純愛してたのか?」
『純愛って例えば?』
「お互い1人の人と添い遂げる…みたいな」
『んー…その時代の人に直接話聞いたわけちゃうから、知らんけど…でもまぁ残ってる書物とか見る限り、現代人の方がよっぽど真面目ちゃう?』
「え?そうなのか」
『なんかもう強引に迫ったもん勝ちみたいなとこあるしなぁ、それこそ源氏物語の光源氏も義母とか人妻に横恋慕しまくってるし』
「橘さんは?」
『え?』
「強引に迫られたらどうする?」
なに言ってんだ俺は
眠たくて頭が回ってないのか
わけのわからねぇことを口走ってる
月島と付き合ってるって分かってて
それでも自分にもチャンスがあるんじゃねぇかって
どっかで期待してんのか?
『強引って…例えば木兎さんみたいな?あの人この前私のお兄ちゃんになるとか騒いでたしなぁ、気持ちは嬉しいけど、お断りさせていただいたわ』
そう言って彼女はからからと笑う
俺の意図は幸か不幸か全く伝わってない様子だ
今はそれでいい
彼女との約束通り、選手とマネージャーとしてあと2年傍にいられれば…
そして日本代表になって、世界トップレベルの選手になって、バレーで飯が食えるようになったら
その時は…
強引に奪いに行く