第12章 移ろう季節
「いい子だな、彼女」
「…まぁね」
「しかもこのケーキ、やたらうまくない?!あんなに美人で良い子な上に料理上手ってどんだけ完璧なの?!」
「でもまぁ圧は強いし、勇ましいけどね」
「蛍、すごい尻に敷かれそうだな、でも歩ちゃんはいいお嫁さんになるだろうなぁ〜」
今日はほんとこの手の話が多い
未来の息子だの、いいお嫁さんだのって話になる度に、意識するじゃん
まだまだ僕たちは付き合ったばかりだけど、いつかそんな日が来ればいいって心の中では思ってたりする
恥ずかしいから絶対言わないけど
「蛍、彼女大事にするんだぞ」
「言われなくても分かってるし…人のことより、自分の心配した方がいいんじゃない」
「またそんなこと言う!兄ちゃんだって本気出せば彼女の1人や2人…
〜〜♪
iPhoneの着信
「あ、歩だ」
恨めしそうに僕を見る兄ちゃんを残し、自室に戻って電話に出る
「もしもし」
『もしもし蛍?大丈夫やった?ごめんついていけへんくて』
「あ、うん大丈夫」
『ほんま?あのおしゃべりモンスター、なんかいらんこと言ってなかった?遠慮なく言ってな!叱っとくし!』
「やめてあげなよ…それにおしゃべりモンスターって言うけど、お父さんと歩ほんとそっくりだから」
『顔やろ?昔から父ちゃんに似てるって言われる』
「顔もだけど、話し方も全く一緒だと思うけど」
『え?!嫌やわ!あんなオジサンと一緒にせんといてよ!』
「オジサンって…歩のお父さん、本当カッコいいし憧れるけどね」
『なに?!蛍が憧れるとか…あの父とそんなに何を話したん?!』
「内緒、男同士の秘密」
『何もう〜気になるわぁ、てか短時間で仲良くなりすぎやろ!ほんまあの父親すぐ誰とでも友達なるからなぁ』
「それ、君もだけどね」
そんな風に他愛もない話をして、2月14日の夜は更けて行った