第12章 移ろう季節
ー月島side
急に妹達が入ってきて、動揺したのは分かるけど…
それにしてもサーバーごと僕の口に突っ込んでくるとは思わなかった
苦笑いしながら、僕の口元のクリームを拭ってくる歩に意地悪してやろうと思って
「やだ、口でとって」
って言ってやる
「なっっ!」
みるみる彼女の顔が真っ赤になる
「そっ、恥ずかしすぎるわ!無理!」
「何で?さっきまでキスしてたじゃん…割と積極的に」
「ちょ、ほんまやめて!恥ずか死するから!それに、キスとはまた別やん!」
「そう?一緒でしょ」
「違うって!もうなんか卑猥やん!」
「卑猥って…」
必死に言い返してくる彼女が可愛くて、つい笑みが溢れる
「とにかくっ、もう取れたし」
そう言って彼女は僕の口元から拭いとったクリームがついた、自分の指をペロッと舐めた
なんか…それも割とドキッとするんだけど…
歩はケーキにラップをすると
「冷蔵庫に閉まっとくね、持って帰ってくれる?」
と訊く
「もちろん」
僕たちは彼女の部屋を出て階段を降りる
ケーキを両手で運ぶ彼女を後ろから見下ろしながら
さっき上の妹が言っていた言葉を考えていた
色気のない姉
妹から見たらそうなのかもしれないけど
僕から見たら…
もうほんとヤバいんだけど
普段とのギャップがあるから余計か
色っぽい女の子の表情を見せられると、理性が吹っ飛びそうになる
そして、この表情を見られるのは僕だけだって思うと
少し心に余裕ができた
歩がどんなにモテようが
隙だらけで自覚がなかろうが
こんな顔は僕にしか見せないんだから
…いや…?
黒尾さんの前でもこんな顔してたような…
やっぱ心配かも