第12章 移ろう季節
私はもうすぐ床と並行って所から、咄嗟に跳ね起きて
机の上のケーキの横に置いてあったケーキを取り分ける、ケーキサーバーを掴んだ
そしてショートケーキを手早く掬って、蛍の口に押し込む
と、同時にガチャッと部屋の扉が開いて、妹達が顔を出す
「お姉!蛍くん!ごは…ん?」
上の妹が私たちの様子を見て固まる
姉がケーキサーバーごと、彼氏の口の中にケーキを突っ込んでいるのだから無理もない
その後ろから下の妹も顔を出して
「え、なになに?どういう状況?!お取込み中かと思ったら、謎の儀式執り行われてるし」
と言う
「なっ!何がお取込み中や!やかましいわ!てゆーかお取込み中やと思うならノックぐらいして!」
数秒前までの自分達のやりとりが脳裏に蘇ってきて
お取込み中と言われれば図星なわけで、急に恥ずかしくなる
「まぁご飯やし、それ食べ終わったら降りてきてや」
三女が言うと、次女は
「蛍くん…色気のないお姉でごめんな」
口の中いっぱいにケーキを詰め込まれる蛍に、憐れみの表情を向けながら言うと、ゆっくりドアを閉めて階下に降りて行った
「はぁ…危なかった」
胸を撫で下ろす私を、蛍が不服そうな表情で見下ろしている
見下ろすだけで何も言えないのは、口の中いっぱいに詰め込まれたケーキを必死に咀嚼してるから
その様子がまた可愛くて、ついジーっと見てしまう
モグモグと、必死にケーキを食べ終えると
「はぁ…ひとつ言っていい?」
蛍が言う
「はい」
「すっごい美味しかった、多分今まで食べた中で1番」
「え?!ほんま?!ありがとう」
「でも…
普通に食べたかったんだけど?なんであの量を口に押し込む必要があったわけ?!おかしいでしょ」
「いやだって…妹たちの足音が聞こえて、なんか別のことしてたことにしようって思って…咄嗟に掴んだらフォークじゃなくて、サーバーやったってゆう」
苦笑いしながら顔を上げると、蛍の口元にクリームがまだついてることに気付く
私は蛍に近づいて
「ごめんって、めっちゃクリームついてる」
と言いながら彼の口元を指で拭おうとすると
その手をパッと掴まれた
「やだ、口でとって」