第12章 移ろう季節

ー歩side

なんや、ヤキモチ妬いてくれてたんか

いつも飄々としてて余裕アリアリの、この意地悪メガネが私のことになると余裕なくなるとか…可愛すぎて思わず抱きついた

「ちょ、歩」

慌てる蛍

「そうやって言うてよ全部…私もほんまは、今日蛍は誰かにチョコ貰ったんかな、断ったら相手の人可哀想やけど…貰わんといてほしいなってダサいこと思ってた」

蛍の胸に顔を埋めながら言うと、蛍は優しく髪を撫でてくれた

蛍はそれまでもモテてた方やと思うけど、やっぱり春高以降上の学年の女の人とか…他校の女の子とか…色々声かけられてるって噂を聞く

それに前と違って今は一応、彼女…なわけで

気にならへんと言うたら嘘になる



「…そうなの？歩もそんなこと思うの？」

「いや、私をなんやと思ってるん？思うよ！…でも私は蛍の彼女なんやから、誰に何個チョコ貰っても余裕やしって大人の女になりたいやん」

「…そんなのなんなくていい、誰からも貰ってないから」

「え？でも…」

「今日は１日ずっと山口といて、僕宛のチョコは全部山口に受け取って貰った

…僕は歩のしかいらない」


そう言って再び蛍の顔が近づいてきて、優しく唇が触れる



嬉しい

私ってこんなに独占欲強かったんやな

他の女の子達には悪いけど、蛍は私の。

誰にも渡せへん

愛しくて幸せで、自分から角度を変えて蛍の口付けに応える



と、突然両肩を掴んで体を引き剥がされた

？

蛍はハァハァと肩で息をしながら、見たことのない男の子の顔をして私を見つめる

その表情があまりに色っぽくてゾクっとした


「…ダメ…これ以上は、もう止まんなくなるから」


蛍は呼吸を整えながら、そう言う



「…いいのに」

「え？」

「蛍となら、いいのに」



本心だった

こんなにも好きな人に求められて、嫌なわけない



「ッッ！何でそんな煽ってくんの？！本当どうなっても知らないからね？！」


蛍はそう言うとまた、さっきの男の子の顔になって

ゆっくり私を押し倒…




ドタドタドタドタッ




物凄い勢いで階段を駆け上がってくる複数の足音


ヤバい