第12章 移ろう季節
ー歩side
部活が終わり、1年生メンバーと坂下商店までの道を歩く
「歩、朝くれたケーキうまかったぞ!」
翔陽が言う
「ブラウニーって言うねんで、ってもう食べたん?」
「そんなの1時間目までには食ってたぞ」
「あげてすぐやん」
「お前意外と料理出来るのな!」
揶揄うように翔陽が言ってくる
「意外ってゆーな」
私も言い返すと
「橘さんは普通に料理上手だぞ」
私たちの前を歩いていた影山くんが突然振り返って言った
「あ、ありがとう」
影山くんはお世辞を言ったりしないから、本心で言ってくれてると思うと照れ臭い
「えっ影山、橘さんの手料理食べたことあんの?!」
山口くんが言う
「ああ…まぁ」
「料理ってほどのもんちゃうやん!ただのサンドイッチとかおにぎりとかしか作ってないし」
「えー、それって影山にお弁当作ってあげてたってこと?!」
「いや二学期の期末テストがやばすぎて、勉強教えがてら一緒に食べてただけやし、なぁ影山くん?」
「おう」
私の自転車を押しながら、黙って一連の会話を聞いていた蛍が
「歩いくよ」
と不機嫌そうに言って、自転車に跨る
「あ、うん」
私も自転車の後ろに跨ると
「じゃあ、また明日!」
とみんなに手を振った
自転車に乗ってるから当たり前やけど特に会話もないまま、蛍はペダルを漕ぎ続ける
なんかまた私は怒らせたやろうか?
家に着くと、早速玄関で母と妹達の襲撃に遭った
「お邪魔します」
「蛍くん!久しぶり〜!」
「蛍くんいらっしゃい、ご飯食べて帰るやろ?」
「あ…いいんですか?」
「何もないけど良かったらどうぞ、あ!親御さんには連絡してね」
私は家族を振り切って、自分の部屋に蛍を押し込んだ
「相変わらずゴメンなあの人達、もうかなんわ〜すぐ誰とでも10年前から知り合いみたいに付き合うからさぁ」
「…それ、歩もだけど」
「心外」