第12章 移ろう季節
ー菅原side
昼休み
「菅原〜」
弁当を食べていると、教室の外から清水が呼んでいる
部活を引退してからめっきり話す機会が減ったけど、何の用だろう
奇しくも今日はバレンタイン…
まさかな
なんて思いながら、清水のいる方に近づいて行くと
「歩ちゃんが呼んでる」
え?
まじで?
教室のドアから顔を出すと、そこには制服姿の歩ちゃんが立っていた
でも…
そこには大地と旭もいて
「わざわざ引退した俺らにもバレンタインだとよ、嬉しいな」
大地が俺の方を向いて言う
そりゃそうだよな
春高から帰ってすぐに月島と歩ちゃんが付き合い始めたってことは周知の事実
引退した俺らの耳にも入ってる
「あ、スガさん!お昼ご飯の途中にすみません、これ大したものじゃないんですけど」
そう言って彼女は可愛くラッピングした包みを差し出す
「歩ちゃん、これもしかして手作り?」
清水がラッピングされた包みを見ながら言う
清水まで貰ってるし…
しかも何なら清水のラッピングの方がちょっと豪華だし…
「あ、一応そうです!家族に味見してもらったから、多分大丈夫だと思います」
そう言って彼女は屈託なく笑った
月島には本命チョコを渡すのだろうか
好きな女の子に、手作りの義理チョコを貰う気持ち
経験した人がいたら教えてくれよ
これは一体どういう気持ちなんだよ
貰えなかったら貰えなかったで凹むくせに、他のメンバーと同じものを渡されると、ああやっぱ俺は彼女にとっての特別じゃないんだなって思い知らされる
予鈴が鳴り、みんなそれぞれの教室に戻って行く
歩ちゃんも、それじゃあと言って俺の隣を通り過ぎようとした
その時ふと香ったのは…
「それ、俺があげたハンドクリーム使ってくれてるの?」
どの匂いが彼女に合うかっていくつものハンドクリームの試供品を開けては嗅ぎ、を繰り返していたから分かる
これは俺が彼女のために選んだ香り