第11章 終わりと始まり
ー月島side
僕たちの初めての春高が終わった
疲労が凄すぎる
宿の風呂はずっと1年生4人で一緒だったし、部屋も騒がしかったから、一刻も早く家の風呂に入って自分のベッドで寝たい
それから鴎台戦の録画を見て…
そんなことをボーッと考えながらバスに揺られていた
それともうひとつ
東京に行ってた数日の間に出た結論
僕には歩が必要だということ
あの無自覚天然男たらしには、本当毎度毎度振り回されるけど…このもどかしいほどの胸の痛みこそが、自分にとって彼女がどれほど大きな存在であるかを証明している
春高が終わったらちゃんと伝えようって決めた
でもいつ?
明日はさすがにオフだから、明日会って言おうか
今晩にでも電話で約束して…
あれこれと考えているうちに学校に到着し、バスから降りてコーチの話を聞いて解散となった
山口と並んで帰路に着こうとしたその時
「ツッキー!!!」
歩が僕を呼び止める
「話があります!」
決意に満ちた彼女の表情を見て、僕は山口に
「先に帰ってて」
そう言うと、歩の元に近づいた
話があるって言ったくせに、2人で歩き始めると歩は無言だった
どこへ行くともなく歩いていて気付けば歩の自転車が停めてある、駐輪場に到着していた
「ねぇ…なんか言いなよ」
「いや、なんてゆうか…まずはお疲れ様ってゆうか…疲れてんのに呼び出してごめん」
「全然」
「で、話ってゆうのは…前にも言おうとしてたけど、私はやっぱりツッキーが…
「あのさ、まずその呼び方やめてくんない?」
遮るように言うと、歩は
「えっっ…」
と言葉を失う
「だって、君もいつかそうなるかもしれないでショ」
「?」
僕の言葉の意図が理解できず、フリーズする歩
「…鈍感」
「ふぇ?」
「だーかーらー…いつか君も月島になったらツッキーじゃん」
みなまで言わすなよ
「…え、私が月島…に、私が月島に?!」
唐突に意味を理解したのか真っ赤になって慌てる歩が面白くて愛しい
「だから名前で呼んで」
「名前って…
け、蛍?」
ッッ
上目遣いで名前呼ぶの反則
想像以上の破壊力でこっちまで恥ずかしくなる