第11章 終わりと始まり
倒れ込むツッキー
どうやら足がつったみたいで、このまま試合を続けるのは難しそう
私は脚を引きずってコートから出るツッキーの元に駆け寄る
「ブロックコート全体見て!サイドとの間あけないで!」
なおもチームメイトに指示を出すツッキーに
「月島先に足!」
と珍しく潔子さんが強い口調で言う
「潔子さん、私が代わります!潔子さんはコートを最後まで見ててください」
潔子さんとツッキーに近づいてそう言うと、潔子さんは
「お願い」
と言って、私に彼を託した
私はツッキーを床に座らせてシューズを脱がせる
「…ハァ…かっこわ
「カッコよかった」
被せ気味に言う
私はツッキーの脚を伸ばして、つま先を掴んで身体の方側にゆっくりと倒す
「ゆっくり息吐いて、痛くない?」
「…うん」
ツッキーも翔陽もいないコート
それでも絶望なんかしてられへん
ツッキーと交代で入ったばっかの山口くんにトスをあげる影山くん
鴎台23:23烏野
私たちは言葉を交わさず、ただコートを見つめる
田中さんが放ったサーブは鴎台に返され…
鴎台のマッチポイントを迎える
『春の高校バレー男子準々決勝、鴎台が王手!!』
あと一点という場面で会場の盛り上がりも最高潮に達する
相手からのサーブを東峰さんが上げ、大地さんがスパイクを打つけど、壁に阻まれる
こちらのブロックも負けてない
「ワンチ!」
コートの外からこんな風に言うツッキーは珍しい
最後まで戦いたかったやろうな…と思いながら、その横顔を見つめる
鴎台の鋭いスパイクを辛うじてレシーブした大地さんから、影山くん、そしてエースの東峰さんに託すようにボールが上がる
ここへきて、高さも威力も全く衰えない強打を東峰さんが放つ
ドボォっと凄い音がして、3枚ブロックが弾き飛ばされるけれど、鴎台は拾っている
そしてドンッと力強くフロアを踏み締めた星海さんが空中に舞う
そこからは全てがスローモーションに見えた
星海さんの視線
すこし開いた山口くんのブロックの両腕の間を通り過ぎるボール
そしてそのボールはノヤさんの腕を掠める
みんなが追いかけるけれども、届かずに
…ゆっくりとコートに転がった