第11章 終わりと始まり
ー歩side
2セット目のセットポイント
ツッキーと山口くんがコートに戻ってきた
サーブポジションに立つ山口くんは堂々と落ち着いていて、ベスト8チームのピンサーの風格が漂ってる
山口くんが放ったジャンフロは2mを牽制し、乱れたレシーブは星海さんへ
星海さんの前に立ちはだかるブロックはツッキーと影山くんの2枚
「とめる!」
ツッキーがそう言った気がする
珍しい、そう思って見ているとツッキーは星海さんのスパイクを避けるように、空中で右手をずらした
ブロックアウトを狙っていたであろう星海さんのスパイクは、そのまま空を切り、場外に落ちてアウトになった
私の脳裏に擬似ユース合宿で、日向相手に毎日自主練してたツッキーの姿が思い起こされる
「本当のこと言うと、これから先全国と戦えば、ネット際の駆け引きは相当シビアになるでしょ。日向にその駆け引きが出来るかは置いといて、アイツが相当見えてるスパイカーなのは間違いないから…使わない手はないよね?」
翔陽もツッキーも、あの合宿の日々を全て糧にして今日コートに立っていると思うと、胸がいっぱいになって苦しくなる
ツッキーのブロックアウト避けで第2セットを奪い返した烏野メンバーがベンチに帰る途中、ツッキーが2階のギャラリーにいるお兄さんに向かって、小さくVサインをした
お兄さんもそれに応えるように満面の笑みでピースを返す
その様子を見て、込み上げる涙をグッと堪えて、拍手を送った
擬似ユース合宿の帰り道で聞いたお兄さんとの確執の話
ツッキーはそれを全て乗り越えて力に変えた
期待して失望することを恐れていたツッキーはもうどこにもいない
バレーボールがツッキーをこんなにも成長させた
ツッキーと目が合う
今ハッキリとわかった
ツッキーをこれほどまでに夢中にさせるバレーボールに嫉妬するって思ってたけど、そうじゃない
ツッキーがバレーにハマっていく程、私はそんなツッキーのことをどんどん好きになっていったんや
私の存在がツッキーを苦しめるとしても、好きな気持ちは止められへん
この春高が終わったらちゃんと伝えよう
どんな結果になったとしても