第11章 終わりと始まり
卑屈だった僕の目を覚ましてくれた君はいつも僕を肯定してくれる
こんな風に兄ちゃんとピースサインを送り合えるようになるなんて、少し前までなら考えられなかった
お互いを想い合っていれば拗れても仲直りして、また一緒にいられるようになる
歩が僕に言った言葉
ああ、そっか…そうだよな
やっと分かった
期待して失望するのが怖くて…逃げるのはもう終わりにするよ
歩、僕はもう逃げない
2セット目を取りかえしたチーム全体へなのか、それとも僕個人になのか、目を潤ませながら拍手をする歩と目が合う
待ってて歩
拗れて遠回りしたけど、今日勝って…全部勝って
必ず僕から伝えるから
歩は僕と目が合ったことに気付くと眩しく微笑んだ
気持ちとは裏腹に、何かが絡み付いたように重たい脚を引き摺り、ベンチに腰掛ける
と、
「お前ずっとアレ狙ってたの?!こわ!」
田中さんが言いながら近づいてくる
「キサマァァァ…」
「なんでわかった」
「狙ってやったのかよ!?」
影山、日向、西谷さんも近寄ってきて口々に言う
「皆さん座ったらどうですか」
呆れながら応える
連日連戦、今日なんてフルセットを2試合
なのにこの人達なんでこんなに元気なわけ?
それどころか日向なんて今日今から6試合目をすることをワクワクしてる節すらある
本当キモチワルイ
束の間の休息が終わり、重たい身体を何とか持ち上げる
それでも出たくないとか交代したいとか思ってない自分に正直驚いてる
『さぁ春高3日目、最も過酷なダブルヘッダー!しかし勝てば準決勝センターコート!
烏野高校対鴎台高校
運命の最終セット!
烏野ビッグサーバー影山のサーブで始まります!!』
ピーッ