第11章 終わりと始まり
歩の問いかけにコクリと頷く
「スタメンどころかベンチにも入ってなくてさ…こっそり見に行った試合で、向かいのギャラリーで応援してる"その他大勢"の兄ちゃんを見た時の光景は今でも鮮明に覚えてる」
「…そっか」
「僕の前ではスタメンで大活躍してるって嘘ついてたからあの人…」
「失望した?」
「そうだね…」
「だから自分にも期待しなくなった…とか?失望したくなかったから」
「それもある。それに、スタメンにもなれなくてその他大勢の1人になってる兄ちゃんを見て、でもスタメンになったところでチームが全国大会に行けるとも限んないし、仮に全国に行けたとしてその中で優勝できるのは一校しかないのにさ、みんなたかが部活にどうしてそこまで、必死になれんのって…」
こんなやさぐれたこと言ったら、歩に叱られるかなって思ってたけど、僕が話してる間、彼女はずっと真面目な顔をして耳を傾けてくれてた
「それについての答えは分からんけど、きっとツッキーが思ってることは間違ってないし、誰もが多かれ少なかれ思うことあるんちゃうかな?」
「…やさぐれてたって言ったくせに」
「めっちゃ根に持つやん…だってプロでも目指さん限り、この部活の行き着く先とか、どこにモチベーション持っていくかって結構みんな考えるんちゃうかな?」
歩はそう言って僕を肯定してくれた
「それに…やっぱり2人は仲良し兄弟やと思う」
「どうして?」
「お兄さんは多分、ツッキーの期待を裏切りたくなくて嘘をついてたんやろ?ツッキーの自慢のお兄さんでいたかったから」
今となってはそうだったんだろうと思う
「お兄さんはどんな気持ちで嘘ついてたんやろうな…きっと苦しかったと思う」
「…だろうね」
「そんでツッキーはそれを分かってたんやろ?お兄さんが自分のために嘘をついてたって…だから、そんな苦しい嘘を吐かせてしまった自分が嫌やったんちゃう?」
確かに僕はあの時、兄ちゃん自体じゃなく、兄ちゃんにあんな嘘を吐かせた自分に嫌気がさしたのかもしれない
「私には2人がお互いを想い合ってたように思える。だからこうして拗れても仲直りして、また一緒にバレーができるようになったんちゃうかな」
歩はそう言って笑った