第11章 終わりと始まり
そしてギャラリーを見渡すと兄ちゃんと目が合った
僕はみんなから見えないように小さくピースサインを作る
兄ちゃんは満面の笑みで僕のピースに応えた
あれはいつだっけか、擬似ユース合宿の帰りだっただろうか
歩に言われたことを思い出した
「昨日もめっちゃ遅くまで練習してたな!私ちょっと感動した!」
「なにが?」
「ツッキーが翔陽誘って自主練なんて、思わず心の中で大地さんに手紙書いたもんな」
歩が興奮気味に言う
「そー言えばツッキーって、当初何であんなやさぐれてたん?」
「は?…別にやさぐれてないし」
「やさぐれてたやん、山口くんに胸ぐら掴まれてたやん」
改めて"やさぐれてた"と言われると、恥ずかしさが込み上げてくる
「…何で今更」
「えーなんとなく?だって…ツッキーのこと、全部知りたいってゆーか…なんてゆーか」
歩は少し頰を染めながら、目線だけをチラッと僕の方に向けてゴニョゴニョと口籠る
その様子が可愛くて思わずフフッと笑みが溢れる
「だって!私の目から見たら、背もあって技術もクレバーさもあって、しかもほんまは負けず嫌いなくせに、当時のツッキーってわざと気持ちにブレーキかけてる気がしてたから…何でやったんかな?って不思議で…あ、もちろん話しにくいことなら、言わんくてもいいから」
「…別に話しにくいってことはないけど…1つのきっかけは兄ちゃんだったかもしれない」
「兄ちゃん…って、あのツッキー溺愛お兄さん?」
「まぁ今はあんな感じだけど…ほんとここ3.4年まともに会話してなかったからね」
「ええええ?!?!お兄さんのチームに練習行ったりしてたし、貰ったスポーツグラスめっちゃ大事にしてるから、仲良し兄弟なんやと思ってた」
「まぁバレー始めたきっかけも兄ちゃんがやってたから何となく…だったと思うけど…兄ちゃんがウチのOBだったのは知ってる?」
「うん、それは知ってる」
「年が離れてたのもあって、小学生の僕は兄ちゃんのこと強豪校のスター選手だって思い込んでた…でも兄ちゃんがいた時はちょうど、烏野が強くて全国行って…小さな巨人がいた時代で」
「…スタメンやなかったとか?」