第11章 終わりと始まり
「うぇ?!あ、歩ちゃん?!」
驚いた様子でやっちゃんがこっちを見る
「目ェ覚めた…私、ここに何しに来てんのって話やわ
私は烏野のマネージャー、みんなの試合を目に焼き付ける」
そんでちゃんと記録を取って、次のみんなの試合のために活かす
次か…
春高が終われば、次の公式戦は3年生のいない烏野になる
今のみんなを、この烏野をしっかり見届ける
そう決意を新たに第2セットまでの間、慌ただしくドリンクやタオルを配った
あれ?
気のせいかな…
今、ボトルを受け取った翔陽の手
少し熱かったような…
「まぁあんだけ動いてれば、身体も熱くなってくるか…」
私はさして気にもせず、空のボトルや使われたタオルを回収した
さぁ、2セット目が始まる
「あれ?鴎台ローテ回してきたな」
コートを見ながら呟くと、やっちゃんが
「ローテを回すってことは何か意図があるってことだよね?ウチも日向と月島くんをチェンジしてるね!」
と応える
「監督同士の読み合いやな…どうしても個人の能力やフィジカルには差があって、ブロックの高さやったり攻撃の速さやったりそれぞれに得意分野があるから、誰に誰をマッチアップさせるか、どのローテん時に点稼ぐかって、それによって結構変わってくるからな」
「あわわ…日向が向こうの2mと不動さんと長くマッチアップするローテだね」
「不動さんて(笑)不動産屋かと思うやん!そやな〜強矛強盾対決やな」
ピーッと開始の笛が鳴り、影山くんのサーブで2セット目が始まる
ドゴォッ
ここまで来るとこっちも若干見慣れてきたけど…相変わらずえげつないサーブ
翔陽が殺人サーブと呼ぶのも頷ける
そんで準々決勝まで来ると、このえげつないサーブも上げられるようになってきた
でも八方手詰まりってわけじゃない
さっきタイムアウト中にコーチが言っていた
デディケートシフトで対応しきれないのは…幅
そして幅は翔陽の十八番
影山くんがトスを上げた先
コートの横幅めいっぱい
急加速した翔陽のブロードが炸裂する
『見事に決まった
烏野一年生コンビのワイドブロード!』
得点したのは烏野やのに、めっちゃ嫌そうな顔してるツッキーが笑える