第11章 終わりと始まり
サイドに圧力かけつつも、センターも通さへんってか…
戦いにくい相手に、相当フラストレーション溜まってるやろなと思って、コート内のツッキーに目をやると意外な表情をしていた
イラつくでもなく、絶望するでもなく、なにか感心しているようにネットの向こうの鴎台チームを見つめるツッキー
多分鴎台のブロックシステムから何かを得ようとしてるんやろう
ツッキーが影山くんの方に向き直って、何かを言うと影山くんが凄い形相で応戦する
「影山くん…どうしたのかな?」
やっちゃんがオロオロとしながら言う
「あれやろ、真ん中一回止められたからってビビってんなよ的なことをツッキーが煽ったんちゃう?」
「それって」
「次も俺に寄越せってことやな」
「本当…月島くん…半年前とは別人だね」
「うん…」
いつの間にこんな風に、高みを見据えるようになってたんやろう
毎日毎日一緒にいたのに
その少しずつの変化に気付かんまま、ツッキーはいつしかどんどん前を歩いていって
私はその背中を見失わんように必死で追いかけてる
影山くんはもう一度センターのツッキーを使って、点を取り返した
でも…星海選手の活躍
訓練されたブロックシステムの前になす術なく
1セット目は鴎台に先取されてしまった
最後の一点なんて、相手の2メートルは翔陽の囮に引っかかってた
やのに2度跳びで十分間に合ってブロックポイントなんて…
立ってるだけでネットから手が出てるなんて、そんなんアリなん?
やっちゃんも同じことを考えてるのか胃の辺りを押さえて、険しい表情をしてる
と、やっちゃんはフゥーっと長く息を吐いて私の方を向く
「危ない危ない…私ってネガティヴだからすぐ悪い方向に思考がいっちゃって…だからさっき木兎さんに言われたこと思い出してたんだ」
「そういやなんか言われてたな」
「うん、今みんながどんなに強くなったか…この目に焼き付けるんだ」
そう言って笑ったやっちゃんはいつものオドオドした部分はなくてもう立派なマネージャーの表情をしていた
ここに来て前に進んでるのは選手だけじゃない
潔子さんと過ごせる最後の公式試合を機に、やっちゃんもまた次世代を担うチームの一員として成長してる
私は…?
初日から泣いて、クヨクヨフラフラ…
ビターンッ
頬を両手で思い切り叩いた