第10章 ゴミ捨て場の決戦!
翔陽がオープントス打てるかなんて愚問
中学時代から彼が出会ってきた、何十人と言う人達が上げた数多のトス
その中には私も含めセッターでもない人も混じっていて
それでもどんなトスでも翔陽にとっては、あがるだけで幸福みたいだ
だから春高センターコートで
影山くんの一糸乱れぬ美しいオープントスなんて
翔陽にとっては夢のようなシチュエーションやん
って期待しすぎたんか、翔陽のスパイクは指先に掠っただけ
でもボールは運良く音駒コートに転がった
『ーちょーっとタイミングが合わなかったか、しかし逆に功を奏する形となりました!烏野の得点』
『日向君のハイセットからの攻撃は珍しいですね』
『いや〜しかし今のはたっぷりの助走のためか一段と跳んだように見えましたね!』
実況が盛り上がる中、今の翔陽のプレーについて両チームがコート際でガヤガヤと囃し立てる
「ハハハハハ、なんだよ日向ダセェ」
リエーフ君が言うと山本さんがすかさず
「オメーでも見たことあんぞ!」
とツッコむ
「クソションベンスパイク!!」
と言う影山くんに田中さんは
「大なのかしら小なのかしら」
と返す
敵味方関係なく、バレーボールを愛する仲間として高め合ってきた両チームの関係性は羨ましくなるほど
その空気の中で佇む研磨さんにチラリと目をやると
予想外の日向影山コンビのオープン攻撃にフリーズしてる
今"音駒の脳"を必死にフル回転させて
今の攻撃の意図と対策を考えているのだろう
さっきまで興味を失ったような表情だった研磨さん
その瞳に光が宿る
両校が春高出場を決めた時
翔陽は好きな子を振り向かせたいぐらいの勢いで
研磨に初めて楽しかったって言わせるのはおれ!!
と意気込んでいた
「よかったなぁ翔陽、恋が成就して」
そう呟きながらコートを見て微笑む
さっきのプレーで盛り上がる烏野に追い風、影山くんの殺人サーブ
ドゴォと物凄い音がして山本さんがあげる
「あんなんよく上げるわ〜」
「音駒じゃなきゃサービスエースですね」
苦笑いする木兎さんと赤葦さん