第10章 ゴミ捨て場の決戦!
ー歩side
いつだったか研磨さんが言っていた
『負けるの嫌だけど、勝ち続けたら終わりがくるから。ゲームオーバーよりゲームクリアの方が嫌じゃない?』
今の研磨さんの目
奇想天外奇妙奇天烈な翔陽を攻略して、間もなく迎えるゲームクリアを前に興味を失いつつある
そんな表情
確かにこの試合、翔陽は狙われて牽制されて潰されて…
フラストレーションが溜まってるのが目に見えて分かる
それに焦る気持ちも…
もしかしたら今日の翔陽は
研磨さんの思い通りに動いてるのかもしれない
2セット目も終盤
助走距離を確保しようとした翔陽が、汗で滑って攻撃に入れず失点する
音駒22:21烏野
それでも…翔陽は、烏野はまだ何も絶望的なんてしてない
もちろん私も
翔陽は撹乱させるように速く速くコート内を動き回る
見ているこっちが苦しくなるほど動き回り、跳び上がり、また助走に入る
その時
『オープン!!』
影山くんの声と共にボールは高くフワリと天井めがけて飛び上がる
「センターオープン…?」
「オープン攻撃って…高く上げたトスに合わせて余裕を持って助走を始める3rdテンポの攻撃…だよね?」
やっちゃんがボールを目で追いながら呟く
「うん」
高く上がったトスを見上げる翔陽の目が眩しく輝き、ゆっくりと助走距離を確保して走り始める
そして…
ゆっくりと翼を羽ばたかせながら
ドンッ
強く床を蹴る音がし、翔陽が舞い上がった
会場がどよめく
やっちゃんは口をあんぐりと開けて空中にいる翔陽を見上げている
センターオープン…
速さを第一とする翔陽にオープントスを上げる意味
でも…
私は知ってる
近所の公園、まだまだ練習したりない翔陽が
「歩、トスあげてくれよ!」
と時折頼んできた
「えー、そんなん上手にあげられへんもん」
「普通に高く上にポーンってやるだけ!」
根負けして何回か付き合ったけど
思いの外難しかった
それでも翔陽はどんなトスでも、目をキラキラと輝かせながら全力で打ってくれた
「翔陽ごめんな、いつも影山くんのトス打ってんのに…やっぱ上手にでけへんわ」
「全然!おれ中学の時部員がいなくて、勿論セッターもいなくて、色んな人にこうやって頼んでたから」