第10章 ゴミ捨て場の決戦!
「だって…月島と直接対決出来るから」
そう続けても彼女はピンと来ない様子で首を傾げている
俺は一歩近づいて彼女の耳元で
「歩ちゃんを賭けてね」
と囁いた
やっと意味を理解したのか、驚いた顔で俺を見る頬が朱に染まる
「…もう、またそんな…」
と口籠る彼女
その表情があの日の…
無理矢理唇を奪った時と重なる
「はぁ…俺は良いお兄ちゃんにはなれそうにないな」
と独りごちた
ドォォォ
空気を切り裂くように、コートから轟音がして目をやると、東峰さんの強烈なスパイクサーブでノータッチエースが決まり
『均衡を保っていると言ったそばからノータッチエースーー!』
実況にも熱が入る
「エンジンかかってくんのは音駒だけじゃねーんだよな!コレが!」
と言う木兎さんの言葉に頷く
そこからは取りつ取られつの一進一退で
見ているだけで疲れるような長いラリーが続く
烏野の執拗な攻撃を、何度も何度も拾う音駒
ーでも
本当にしんどいのは…
終始全員で攻撃に参加し続ける烏野の方だろう
「音駒…って感じですね」
コートを見ながら歩ちゃんが言う
「どんな感じ?」
「…木兎さんやウシワカさんみたいな絶望的なスパイクが飛んでくるわけじゃないのに、気づいたらジワジワ追い詰められてくる感じ」
「あー…俺らも東京代表決定戦で戦ったからね、分かる」
「ね、音駒ってめっちゃ真綿で首絞めてきますからね」
歩ちゃんがそう言うと
「何だ歩、音駒の誰に首絞められたんだ?!」
と木兎さんが割って入ってくる
「木兎さん違います、モノの例えです。遠回しにジワジワ追い詰められることをそう言うんです」
「あ、なるほどなー」
『粘る音駒、振り切りたい烏野
見ている方も息が切れそうな攻防…!』
実況を背に轟音と共に放たれた影山のサーブが音駒コート
いや、サイドラインギリギリに突き刺さる
影山…同じセッターとして羨望とも嫉妬とも形容し難い気持ちが込み上げる
それだけじゃない
日向のレシーブも見る間に上達しているし
孤爪はうまく日向を牽制している
ー互いに触発され、加速していく