第10章 ゴミ捨て場の決戦!
ー赤葦side
思えば彼女は初めからそうだった
いつも月島のことに頭を悩ませていた
出会ったばかりの時も、突然キスしてきた月島に悩んでいたし、ディズニーに行った時も、月島のことが好きだと言って涙を流していた
そして春高初日、彼女は月島に冷たくあしらわれてショックを受けていた
すれ違ってうまくいかない2人を見て、心のどこかでホッとしている自分がいる
…だけど、今朝
音駒の軍団に揶揄われる2人を少し離れたところから見ていた
音駒のメンバーが体育館の中に入り、残された2人
歩ちゃんは月島の両手に自分の手を重ねると、ギュウと握りしめた
何をしていたのかは分からないけど、彼女の表情を見てハッとした
見たことない程、眩しい笑顔だった
月島のことを考えているときの君は、いつも難しい表情をしていたと思っていたけど、アイツと2人でいる時の君はこんな顔をするんだ
「アイツら仲直りしたんだな」
思考を遮るように木兎さんの声がする
「…ハイ」
「ツッキーのやつ、ヒドイこと言ってたくせに俺の歩とイチャイチャしやがって!」
「…全くです…木兎さんの、かは知りませんけど」
「…なーアカーシ」
「何ですか?」
「昔から女の子って、彼氏にするならこの人、親友にするならこの人、兄弟にするならこの人って言ったりすんだろ?アレって、どれに選ばれるのが一番幸せなんだろうな?」
「…そりゃ彼氏じゃないんですか?」
「分かってねぇなぁアカーシ、彼氏は別れたら他人だけどよ、例えば兄弟なら一生家族でいられるだろ?」
「…まぁそうですね」
「そう思ったら兄貴も悪くないな」
朝の木兎さんとの会話を思い出しながら、コートに視線を戻す
烏野にとっては絶対に落とせない
そして音駒にとってはぜひとも連取したい
2セット目が始まる
1点目は日向が目の覚めるようなブロードで掻っ攫っていく
スコアボードに目をやると、その傍らに見知った顔を見つけた
木兎さんも気付いたようで、そちらに向かって進み出す
「歩、やっちゃんそこで見てたのか!」
後ろから話しかけると2人はびっくりしたように振り返り
「赤葦さん、木兎さんっお疲れ様です」
歩ちゃんが言う
谷地さんの顔に笑顔はない
「深刻な顔だね」